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稲本潤一が超えてきた日本人の壁 ~海外でプレーする選手に求められること~(前編)

text by 戸塚啓 photo by editorial staff

フルハムでのスタートは鮮烈なものだった

――チームに溶け込むまでには、時間が必要でしたか?

「基本的に人見知りなので、言葉が通じないと引っ込み思案になってしまうというか。最初のうちは、自分からガンガン話しかけることはできなかったですね」

――人見知りとは意外です(笑)。

「最初は、ですけどね(笑)。慣れるのに時間がかかったのを覚えてるし、そのなかで自分のプレーを見せなあかん。けど、貪欲にレギュラー争いをするかといったら、これだけレベルが高いからしょうがないな、という気持ちが少しあったんじゃないかなと。いま振り返れば、慣れるのに精いっぱいで貪欲さを持てていなかった」

――そうでしたか……。

「これだけのメンツがいたら出られないのは当たり前という気持ちが、どこかにあったような……。その経験が、次のフルハムやウェストブロミッジで生かされたのはありますけどね。アーセナルの経験があったから、強い気持ちで競争しよう、貪欲にサッカーに打ち込もう、自分を出そう、と思うようになりました」

――アーセナルの経験あり、日韓W杯での活躍ありで。

「そうですね。W杯で自信を得たのもあるし」

――フルハムでのスタートは鮮烈でした。UEFAカップ出場権をかけたインタートトカップでは、ハットトリックを決めました。結果を残すことで、新しいチームメートにも認められていったのでは?

「それはあるでしょうね。結果が出て、自信がついて、周りに認められて、というサイクルになっていった。新しいチームでの自分の出し方とか、チームへの溶け込み方というのは、移籍を重ねるごとにスムーズになっていきました」

――欧州のトップクラスとの特徴的な違いとして、あらゆる意味でのスピードがあげられます。稲本選手もそうしたギャップを感じましたか?

「プレッシャーの速さとか間合いは、日々の練習から慣れていくしかないですね。まずは100%の力で練習に取り組む。今日はここがダメだったから明日はこうしようといった感じで、練習から課題を持って。そういうことの繰り返しでした。それもやっぱり、アーセナルではそこまで追求できていなかったので、フルハムへの移籍以降は練習から100%の力を出す意識を持ってました」

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