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Jリーグ 12年前

『ちばぎんカップ』で天皇杯王者・柏を下したジェフ千葉。今季昇格の可能性を占う

text by 植田路生 photo by Kenzaburo Matsuoka

まったく機能しないレイソルの3バック

 一方の柏は心配な出来だ。天皇杯を最後まで戦ったためか、コンディションがまるで仕上がっていない。特に新加入のクレオは本来の能力とは程遠く、いい場面と言えば、下がってボールをもらい、左のジョルジ・ワグネルに展開した40分のプレーくらい。工藤とかぶることも多く、連携はまったくと言っていいほどとれていない。

 柏は今季、3バックを試行している。この試合も前半を3バックで戦っているが、戦術的メカニズムはかなり高度のものが要求される。

 例えば、ウイングバックのジョルジがボールを持ったときには左CBの増嶋竜也がそれを追い抜く動きをし、パス交換でディフェンスラインを崩す。増嶋が上がって空いたスペースにはボランチのどちらかが下がり、さらにボールロストした際には、右ウイングバックのキム・チャンスが最終ラインに下がってスライドし、4枚を確保し、守る。

 文章にすれば簡単なように思えるが、これを目まぐるしく展開の変わる試合の中で瞬時に判断し、動くのはかなり難しい。また、ウイングバックの運動量も必要とされる。インテルの長友佑都のようなスタミナがあれば問題ないだろうが、キムはまだしもベテランのジョルジ・ワグネルにそれを求めるのは酷というものだ。


柏レイソル・ネルシーニョ監督【写真:松岡健三郎】

 試合後、ネルシーニョ監督は「目に見えて仕上がりに差があった。ゲームレベルは準備段階。いいトレーニングになった。3バックは良かった。ビルドアップ、特に左サイドのバリエーションはジョルジしかなかったのが課題」と前向きなコメントを残した。

 だが、コンディションが整ったとして、新システムを十分に機能させることができるかは疑問だ。リーグ開幕まではあと半月あるが、レイソルは一週間後にはサンフレッチェ広島とのゼロックス杯、またその後すぐにACLが待っている。戦術を浸透させる時間はかなり短い。

 今季の補強を見て、レイソルはリーグとACLの二冠もあり得ると予想していた。しかし、肝心の戦術が噛み合わず、またコンディションが十分でないまま開幕を迎えてしまうのであれば、いくらJ屈指の陣容でも戦い抜くのは難しい。

 暖かい陽光が差し込む試合だったが、太陽王は未だ眠ったままだ。再び燦々と輝くために、ネルシーニョはかなりの“魔法”を使わなければならないだろう。

【了】

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