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今だから明かせる、松井大輔スポルティング移籍破断劇の裏側

text by 鰐部哲也 photo by Kenzaburo Matsuoka

宇佐美貴史にも熱視線を送っていたスポルティング

 しかし、この両クラブの”意地の張り合い”の犠牲となったのが松井本人に他ならない。松井大輔は、廣山望(ブラガ)、相馬崇人(マリティモ)に次ぐ、ポルトガルリーグ(トップリーグ)3人目の日本人選手としてプレーすることなく、その半月後、失意の中、シベリアのクラブ(トム・トムスク)に新天地を求めることとなるのである。

 スポルティングは、松井獲得に失敗した翌年(2011年)夏のメルカードでも、日本人選手の獲得に乗り出している。ガンバ大阪に所属していた宇佐美貴史だ。バイエルン・ミュンヘンへ完全移籍のオプション付きのレンタル移籍が決定した6月27日以降も、再レンタル先として宇佐美の代理人である西真田佳典と粘り強く交渉を続けていたが、獲得には至らなかった。

 ポルトガルが財政危機に陥るのと時を同じくして、スポルティングも財政難で、ヨーロッパ以外のアジア市場開拓に興味を示し始めていた。現在も”外資導入”を検討しているスポルティングだが、ちょうどこの時期、日本のマーケットに進出してクラブのブランディングと新たなスポンサー獲得を画策していたようだ。

 しかし、昨年になってインド市場開拓へと方針転換。昨年夏にはインド代表主将のスニル・チェトリ獲得に成功している。

 松井大輔のスポルティング移籍劇の裏側には、こうしたクラブの経営戦略があったことも否めないが、ポルトガル「三強クラブ」の名門がその実力を認めて、本気で獲得を熱望し、獲得に乗り出した初めての日本人選手であったことは紛れもない事実である。

【了】

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