ムードメーカーと潤滑剤の穴を埋められるか
三平と石神の放出がもたらすのは、得点力ダウンのイメージばかりではない。ピッチ外でも体を張りムードメーカーとなってきた三平と、“アニキ”として細やかに気を配りベテランと若手とのつなぎ役を果たしてきた石神の穴を埋めることは、チームの結束を強める上で重要なタスクのひとつだ。
始動して1ヶ月が経ち、さらにボディブローのように感じられてきたのが、U-15からの生え抜きでトップ昇格後5シーズン在籍した井上裕大の、長崎への期限付移籍にともなう放出だ。新加入選手や後輩たちを積極的に溶け込ませ、一昨年10月に負った右足関節骨折のリハビリ中でさえも、献身的にポジティブさをもたらすチームの潤滑剤であり続けた井上の非在が、見えないところで効いてくることになると、ピッチ内にも影響が及ぶ可能性は大いにある。
いくつかの練習試合で最終ラインを務めた高木は、前線に入った若い選手たちの印象を「戦術を真面目に遂行しようとするあまり、それ以外のプレーを選択する余裕をなくしてしまっていた。もっと自分の特長を出してもいいのだが、まだ遠慮が見える。おとなしすぎる」と語った。
グラウンドでも、声を出す選手とそうでない選手とのギャップが目立つ。この時期に自分をアピールすることに消極的では、周囲との連係も育ちにくい。戦力を様々に組み合わせ、オプションも試すなかで、そういった部分も含めての実力差がじわじわと顕著になっている。
最年長の宮沢を中心に、チームの一体感を育てるサポート役は誰になるのか。在籍期間の最も長い高松は、5日間の合宿の最終日に「まだみんな本性を隠してるね。ツジ(辻尾)とかね」と、ムードメーカー候補の名を挙げた。
ここまでJ1の3チームとの練習試合を経て、その強さやスピードに圧されている現状は否めない。実戦を重ね組織として育つまで、昨季以上の辛抱強さが求められそうだ。