泥臭く勝ち抜いた、J2で6位のチーム
県民やサポーター、さらには行政と地元経済界の支援を受けてリーグからの借入金を完済し、激しい混戦となった昇格争いに食い下がって、プレーオフ圏内ぎりぎりの6位から劇的なJ1昇格を果たした大分。千葉と相まみえたプレーオフ決勝では、タレント揃いの相手に押し込まれ続けながら劣勢を耐えに耐え、1-1-3-5という超攻撃的布陣で賭けに出てワンチャンスをものにした。それこそ、昨季の大分の戦いを象徴するような試合だった。
「ウチはJ2で6位のチームだから」と、国立競技場での胴上げを終えた直後に、田坂監督は厳しいシーズンへの覚悟を口にしている。クラブはいまだ5億円超の債務超過を抱え、高額年俸選手を獲得するわけにもいかない。昨季の札幌さながらにぶっちぎりで降格する予想も聞こえてくるなか、どういう戦い方を選択するのか。
この2年間で築いてきた「全員守備・全員攻撃」のアグレッシブなスタイルは、裏を返せば「個の能力に頼れない代わりに組織力で戦う」ということでもある。これを継承する方向で、その骨格をより太くするために、9人を新たに獲得した。内訳はDFが4人、GKが1人と守備陣が過半数。
現実的な戦い方を想定しての補強と捉えるのが自然だが、それぞれの特性を鑑みれば、ビルドアップ能力の高いメンバーを揃えたとも見える。中でも高木和道、児玉新、辻尾真二の3人は、清水在籍時に田坂監督のコーチ時代の指導を受けており、戦術へのフィットも早そうだ。
MFでは、北九州で2季にわたりキャプテンを務めた木村祐志を獲得。田坂監督が初対戦したときから「最も警戒すべき選手」と高評価していたプレーヤーで、豊富な運動量と高い技術で中盤に安定感をもたらす。スピードと仕掛けに長けた松本怜や、JFAアカデミー在籍時からセンスを買われ飛び級でU-19代表に招集された松本昌也には、攻撃の活性化が期待される。