今シーズンもベースとなる戦いは変わらない
まず、チームを離れた選手で特筆すべきなのは東慶悟だ。東は主にトップ下で攻撃の牽引役となっていた。得点数こそ26試合で1得点と伸びなかったものの、ロンドン五輪にも出場して経験を積み、アタッキングサードで貴重なアクセントとなっていた。また、出場機会の減っていた深谷、神戸から期限付き移籍で加入していた河本らのベテランディフェンダーがチームを離れたことも、層の厚さを考えれば痛い。
そして補強という観点で考えると、カルリーニョス、ズラタン、ノヴァコビッチの外国人選手を揃ってチームに残すことができたのが大きい。カルリーニョスは当初はボランチで、中盤戦以降は攻撃的な位置でも出場するようになったが、今季の陣容を考えるとカルリーニョスは中盤の右で出場することになるだろう。攻守にわたって献身的で、展開力のあるカルリーニョスを期限付き移籍から完全移籍でチームに残したことは、彼が今シーズン重要な役割を担っていることの表れと言えるだろう。
ズラタン、ノヴァコビッチの二人は、いずれもスロベニア代表の経験を持つ経験豊かなフォワードだ。二人とも恵まれた体躯を持ち、しっかりとしたフォワードとしての技術を持っている。昨シーズンは短期間の出場ながらズラタンは12試合で4得点、ノヴァコビッチは12試合で5得点を挙げた。また天皇杯の川崎フロンターレ戦では前半を0-3で折り返すという劣勢を、ノヴァコビッチと東のコンビネーションで4点を奪い大逆転勝利を演出するなど、チームの大きな力となった。
彼ら3人の外国人選手が今シーズンの幹となるのは間違いない。そして神戸から加入後、センターバックとして13試合に出場した河本の後釜として、東京ヴェルディから高橋祥平を獲得、カターレ富山から福田俊介をレンタルバックで呼び戻した。二人とも昨シーズンはJ2でプレーしていたが、いずれも35試合以上に出場して経験を積んだ。
高橋はディフェンダーながら主にセットプレーから6得点を奪い、福田も富山で過ごした1年半のレンタル期間をディフェンスの核として大きな活躍を見せた。二人ともポテンシャルの高い選手であり、菊地と組むことが予想されるセンターバックのもう一つの席を、片岡洋介を含めた3人で争うことになる。河本は抜けたが、そこまで大きな痛手にはならないだろう。
そして期待の新人が、早稲田大学から加入する富山貴光だ。今年の初めに行われたインカレでも主将としてチームを牽引し、早稲田を5年ぶりの優勝に導いた。早稲田では1年生のときからスタメンに名を連ね、多くの得点を重ねてきている。インカレ後のコメントでも、“プロに入ったら開幕スタメン、二桁得点を目標にする”と強気のコメントを残している。ズラタン、ノヴァコビッチ、そして長谷川悠の壁は低くないが、富山が宣言通り開幕から試合に絡んでいくことができれば、アタッカーの層は間違いなく厚くなる。
全体的にそれほど多くの選手が入れ替わった訳ではなく、昨シーズン後半に見せた戦いを今季もベースとして続けていくことが予想される。開幕からスロベニア人ストライカーの二人が本来の実力を発揮できれば、中盤から後ろには経験のある選手が揃っているだけに、残留争いに巻き込まれる恐れは高くないだろう。