新加入選手がどのような働きを見せるか
大きな話題となったのは、浦和を退団した田中達也を獲得したことだ。田中達也は2005年に右足脱臼骨折の大けがを負って以降、細かな負傷を繰り返すようになり全盛期のパフォーマンスを失っていった。特にここ数年は出場機会を大きく減らしており、彼の加入が直接的に大きな戦力アップに繋がるとは考えにくい。ただ、Jリーグ通算233試合出場・56得点、日本代表としても16試合に出場し3得点を挙げている彼の経験は、間違いなくチームに大きな刺激を与えるだろう。
サッカーに対して真摯な姿勢を持ち、ストイックに自分を追い込むことのできる田中の加入は、鈴木武蔵らのポテンシャルある若手アタッカーの成長に一役買うかもしれない。またプレー自体もキレのあるドリブルは健在で、シーズン通してフルに活躍することは望めないにしても、限定された時間であれば優れたパフォーマンスを発揮する筈だ。
そしてフォワードとしては、昨シーズン岡山で大ブレイクし18得点を挙げ、復帰してきた川又堅碁の活躍に期待したい。川又は動き出しの質、一瞬のスピードで勝負する生粋のストライカータイプの選手で、ビルドアップに積極的に関わるというよりは、前線でディフェンスラインと駆け引きしながら、虎視眈々とチャンスを伺うプレースタイルだ。
チームとしてはブルーノ・ロペスがフォワードの柱になるだろうが、ブルーノ・ロペスは下がってボールを受けて仕掛けていくプレーも得意としており、川又と役割が被る心配をする必要はそれほどないだろう。川又は岡山で、少ないチャンスを確実にものにしていく術を身につけた。新潟にとって面白い存在になるのは間違いない。
また鹿島から加入した岡本英也も、高さとテクニックを併せ持つストライカーだ。鹿島では出場機会に恵まれなかったものの、2011シーズンは福岡でプレーし8得点を挙げている。左右両足でしっかりとボールを蹴ることができ、フォワードとして必要な要素をバランス良く持っている選手であり、田中と川又と合わせ、2トップの争いはかなり激しいものになるだろう。
中盤にはポルトゲーザからレオ・シルバ、福岡から成岡翔が加入した。レオ・シルバはボランチを本職としていて、昨シーズンほぼフル出場を果たした本間勲と三門雄大のコンビに割って入る。この3人でのポジション争いになるのか、三門がポジションを右サイドに移すのか現時点では明確ではないが、菊地を含めて中央でプレーできる選手の層は間違いなく厚くなっている。
問題となるのは、やはり鈴木と石川が抜けたディフェンスラインの再編になる。横浜FMから金根煥を、浦和から濱田水輝を獲得したが、センターバックが二人とも入れ替わるため、一からの再構築を余儀なくされる。
金根煥は鳥栖で31試合に出場して、そのポテンシャルを遺憾なく発揮した。193センチという長身を攻守両面で生かすプレースタイルは迫力があり、今シーズンはディフェンスの中核として期待される。浦和から加入した濱田も五輪代表でプレーした経験を持つポテンシャルのある選手だが、浦和では多くの出場機会を得られていた訳ではなく、昨シーズンは出場した試合で試合感のなさを露呈する場面が目に付いた。
金はスタメンが当確として、彼の相棒を濱田、大井健太郎、菊地らで争うことになる。昨シーズンは守備の固さがチームの特徴となっていたが、どれだけ早く安定したディフェンスラインを築くことができるかが、今シーズンを占う上で大きなカギになる。