鹿島らしい強さを取り戻せるか
鹿島は昨年、5年間チームを率いたオズワルド・オリヴェイラ監督の後をジョルジーニョ新監督が引き継ぎ、新しい体制でシーズンに挑んだ。全体的に高齢化が進む中で、若返りを図りながら結果も求められるという、ジョルジーニョ監督にとって難しいミッションだったのは間違いないだろう。リーグ戦では開幕から5試合目まで1得点しか奪えず、1分4敗と非常に厳しいスタートとなった。
開幕前に川崎からジュニーニョを、シーズン途中にはドゥトラとレナトの外国籍選手を補強したものの、序盤の躓きを取り戻すことは難しく、リーグ戦は最終的に11位で終えた。鹿島にとって、二桁順位でリーグ戦を終えたのはクラブ史上初めてのことだ。一方、これだけ苦しんだシーズンでありながら、ナビスコカップを制覇したところに、鹿島の持つ本質的な強さも垣間見られる。
ジョルジーニョ監督は家族の問題もあり、1シーズンで監督を退任。その後の監督人事が注目される中、最終的に2000年~2005年まで指揮を執ったトニーニョ・セレーゾの就任が発表された。鹿島は伝統的にブラジル人監督がチームを率いることが多いが、トニーニョ・セレーゾはその中でも非常に“堅い”サッカーを展開する指導者だ。セレーゾはイタリアで長くプレーしたこともあり、ディフェンスに対する厳しい視点を持っている。
その手堅さは、どんな試合展開でもしっかりと勝ち点をものにする“鹿島らしい”戦いを取り戻す助けになるだろうし、今オフに獲得した選手を見ると、その意図は十分に伝わってくるのではないだろうか。
今オフ、チームに加わった選手はウム・サラル(カタール)から加わったダヴィを筆頭に7人。一方チームを離れた選手は、ドゥトラ、興梠、新井場といったレギュラークラスを含めて9人であり、戦力ダウンを指摘されても仕方ないところはあるだろう。ただ、チームの方向性を考えた的確な補強がなされているのは間違いない。
鹿島の戦いを特徴付けるポイントには、「堅いディフェンス」「鋭いカウンター」「セットプレーの強さ」が挙げられる。仮に相手に押し込まれても落ち着きを持って対処し、粘り強く守りながらカウンターのチャンスをうかがっていく。昨年のナビスコカップ決勝は、まさにその形を地で行くものだった。
昨シーズンは、攻撃面で大きな役割を担っていた野沢の移籍した穴を埋められず、自分たちの形で戦うことができない試合が増え、それがリーグ戦11位という結果に結びついた大きな要因だったと言えるだろう。セレーゾの就任は、鹿島らしい強さを取り戻すための第一歩だと考えられる。