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“スーペル・デポル”を率いた稀代の戦術家・ハビエル・イルレタ インタビュー

「今後は戦術的な柔軟性、多様性を持ったチームが勝ち残っていく時代になる」
巧みな戦術を駆使し、デポルティーボ・ラコルーニャ(スペイン)の黄金期「スーペル・デポル」を築き上げたハビエル・イルレタ。稀代の戦術家と謳われる彼が、現代戦術の「トレンド」と「進化」を紐解く。

text by 小澤一郎 photo by Kazuhito Yamada

2010年1月発売【欧州サッカー批評1】掲載

最高の守備はボールを持って攻撃すること

――現代サッカーの戦術をどのように分析していますか?

「数年前まではカウンター戦術が勝利のためには有効と思われてきたが、ユーロ2008でのスペイン代表の優勝と昨季のバルセロナの三冠で、現在はポゼッション戦術への評価が高まっている。 戦術というものは守備をベースに進化してきており、現代のトレンドは『最高の守備はボールを持って攻撃すること』というポゼッション戦術的な考え方だ」

――ただ、ポゼッション戦術を採用するためにはシャビ、イニエスタのような選手を抱える必要があるので、普通のチームがやろうと思ってできるものではありません。

「その通り。スペイン代表もバルセロナもシャビのような選手がいるからこそ、ポゼッションサッカーができる。ただ、ここ10年、15年で戦術の流れを振り返った時、スペイン代表とバルセロナが方向をドラスティックに変えたことがわかる。

 以前は、技術的に優れた選手を何人も同時起用することは“リスク”と考えられていた。中心選手は1人で充分で、他の選手はその中心選手のためにプレーしていた。

 例えば、中盤にシャビ、イニエスタ、シルバ、セスクといった体格に劣る小柄な選手を同時起用することは『魅力的だけれど守備面でリスクが高すぎる』と言われていたに違いないし、実際そういうリスクを負ってまで勝利を求める監督は存在しなかった。その壁というか制限をスペイン代表のルイス・アラゴネス、バルセロナのグアルディオラの2人が取り払ってしまった」

――例えば、以前の戦術や監督の考えからすると前線右にメッシがいて、中盤同サイドにシャビを置くということはありえないわけですね?

「そういうこと。以前の考え方であれば、監督はメッシを中心に中盤にはボール奪取能力に優れた選手を起用していたはず。でも、グアルディオラはボールを奪い返すことではなく、ポゼッション率を高めることを考えてチームを作った」

――もしバルセロナにグアルディオラではなく、モウリーニョが来ていたら中盤は屈強な選手で構成されることになったと考えますか?

「それはわからないが、ヤヤ・トゥーレ、ブスケツ、ケイタの中盤3人になっていた可能性もあるだろう」

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