ピッチをワイドに使う清水のサッカー
ゴトビ監督の志向するサッカーは、4-1-2-3のシステムを基本に、ウイングが広く張り出してポジションを取る、ピッチを広く使うサッカーだ。昨シーズンはスピードのある高木と大前が両翼に位置して、そこから多くのチャンスが生まれた。
また、高い位置からアグレッシブにプレスを続け、ディフェンスラインも非常に高い位置取りをする。一人ひとりの受け持つスペースが大きく、攻守両面で1対1の強さが要求され、攻守の切り替えも非常に早いため多くの運動量が求められる。
昨シーズンの清水は、警告数と退場数がともにリーグワーストとなった。これは、高いラインを設定し積極的なディフェンスを行っていた現れとも言えるが、一方でボールポゼッションの拙さがその要因にもなっていた。攻撃に入るとチーム全体が押し上げてサイドバックも高い位置を取るため、相手に対して圧力を掛けていくことができる反面、不用意なパスミスやボールロストがあると、一気にピンチに陥ってしまう。そこでファールを犯し警告を受けるような場面も多かった。
ボールポゼッションが上手くいかなかった大きな理由として、1トップの選手起用に悩んだことが挙げられるだろう。序盤はジミーフランサや高原などを起用していたが、シーズン途中で韓国から金賢聖を獲得した。後半戦は金が徐々にフィットして良いパフォーマンスを見せられるようになっていたが、それでも1トップに一度楔を入れ、そこからサイドへ展開するような形は思うように出せなかったのが実情だ。
ジミーフランサにしても金にしても、センターフォワードとして出場しながら、クロスからの得点は皆無に等しい。ウイングを置き、サイドバックの攻め上がりも積極的なチームにおいて、クロスから得点が生まれなければ戦いはどうしても苦しくなる。
ゴトビ監督の志向するサッカーは、一人ひとりが局面でしっかりと勝つことが大前提となっており、ウイングの大前と高木は自らのスタイルがフィットして持っている力を存分に発揮していたが、決定的な1トップの選手が見つからなかったところに、清水の苦しさがあったと言えるだろう。
ヨンアピン、平岡、村松らで構成される中央のディフェンスは堅く、一昨シーズンよりも失点数は大幅に減った(2011年:51失点、2012年:40失点)。チーム全体で連動したタイトなディフェンスも安定感が増してきている。また、奪ってからのカウンターでも、スピードのある前線のタレントが相手に脅威を与えていた。チームとして考えなければならないことは、遅攻に入ったときのポゼッションの質を高めること、そして1トップに適合する選手を当てはめることだろう。
そして今オフ、清水はアルアラビからバレーを獲得した。日本でも大宮、甲府、G大阪でプレーしたバレーは、強烈な身体能力を持つアタッカーであり、J1での実績もある。J1での出場記録は79試合で44得点と、ストライカーとして十分な結果を残してきている。