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日本代表 12年前

ザッケローニの3-4-3は日本の武器になり得るのか?(第1回)

text by 河治良幸 photo by Kenzaburo Matsuoka

3バック再考 ザッケローニとトルシエの違い

 3-4-3を語る前に、押さえておきたいのが3バックの特性だ。守備の視点から考える場合、第一に相手の2トップに対して数的優位を作れる点があげられる。[マンマーク+スイーパー]という守備スタイルは20世紀の半ばには出てきており、3トップなら4バック、2トップなら3バックとFWの数に応じて変遷してきた。現代的なゾーンディフェンスが普及してからも、守備の数的優位を重視する傾向は変わらない。

 最近はサイド攻撃を重視するため、3トップや両ウィングにアタッカーを置く1トップが主流となっており、それに対応する守備の並びとして4バックが適しているのは確かだ。もちろん2トップのチームもあるため、中には相手のFW枚数に応じて、3バックと4バックを使い分けるチームもある。ただ、2トップに対して3バックを用いるにしても、サイドハーフやサイドバックによる継続した攻撃に対し、サイドMFがケアを強いられる場面は多い。それが慢性化することでラインが押し込まれると、事実上の5バックになりがちなのだ。

 そこからのロングカウンターが1つの武器になっているが、一般的に攻守のバランスを重視する守備には適していない。そもそも継続的なチーム強化を図るには、相手ありきではなく、自分たちの基本システムをある程度固めることが重要と考える監督が多い。4バックを固定すれば、仮に2トップで来られても、4人のDFがゾーンの応用で、ポジションや距離感を調整し、そのまま対応できるというのが常識的だ。一方、3バックで同様の対応をするには、かなりの応用力が求められてくるのだ。

 それでも3バックを採用するならば、監督がそのための緻密な方法論を持ち、それを選手に植え付ける必要がある。精力的なプレッシングにより、相手がサイドを突いてくる余地を限定するのが1つの方法だ。02年W杯で日本代表を率いたフィリップ・トルシエの“フラット3”は象徴的で、徹底してラインを上げ、コンパクトな陣形を維持することで、サイドに生じるリスクを小さくしていた。

 ザッケローニの場合、基本ポジションは3枚のCBを並べるが、サイドを狙われると見れば、CBが同サイドにスライドし、逆サイドのサイドハーフがディフェンスラインに落ちて、一時的な4バックを形成する。プレスに直接参加しない逆サイドの選手が、ディフェンスラインに下がる事で、全体が後ろに下がらず、スペースを埋めることを志向しているのだ。

 守備戦術の工夫で、理論上は3バックを操りながら、現代のサッカーに対応していくことは不可能ではない。戦術に独自性を見出したい監督にとっては、3バックの導入こそその醍醐味が味わえるということも言える。だが、それを機械ではない選手たちに植え付け、継続的に安定した戦いを続けることは決して簡単なことではない。この問題に関しては日本代表を軸に、第3回以降で詳述したい。

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