2011年のキリンカップで試して以来、試合で見ることがなくなったザッケローニの「3-4-3」。昨年10月の欧州遠征前にはトレーニングを行ったようだが、フランス戦、ブラジル戦は普段通りの4バックで戦った。2月6日に行われるラトビア戦、そして3月22日に行われるカナダ戦は、ともにW杯最終予選・ヨルダン戦へ向けた調整と位置づけられるため「3-4-3」が試されことはないだろうが、ヨルダン戦でW杯出場を決めることができれば、ザッケローニの「3-4-3」への熱は再燃する可能性を秘めている。
今回フットボールチャンネルでは、サッカー批評issue52、53で掲載された原稿を改めて掲載し、ザッケローニの哲学ともなっている「3-4-3」の持つ特性を考え、日本代表の武器になり得るのか、4回にわたって可能性を追求していく。(編集部)
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日本代表にアルベルト・ザッケローニ監督(以後、敬称略)が就任して以降、3-4-3に関する議論が沸き起こっている。このフォーメーション(※選手の配置を汎用的に“システム”と呼ぶ傾向はあるが、本来システムとは選手がどう動くかの規則や概念を表したもの。特に今回は3-4-3の中に多様性があることを明確にするため、配置に関しては“フォーメーション”と表記する)が実戦でお目見えした、3月29日のチャリティマッチを境に、3-4-3の是非がメディアやファンの間で取りざたされてきた。
システムでサッカーの優劣や勝敗は決まらないが、合計22人の選手が、国際標準にして105× 68mを走り回るスポーツにおいて、選手の配置は無視できない要素だ。全能なシステムなどは存在しないが、指揮官が標榜する攻撃志向や守備戦術により適したフォーメーション、あるいは時代のトレンドに対抗するべき形が模索され、今日に至っている。
フォーメーションやシステムを語る上で注意すべきは、その理論と実際の運用は必ずしも一致しないということだ。例えばバルセロナが4ー3ー3で欧州王者になったからといって、イタリアのクラブが同じ形を導入しても、そのまま成功に結び付く訳ではない。そこには指揮官が標榜するスタイル、所属選手の個性、クラブや国の伝統など、様々な要素が絡んでくる。
それは自身の掲げる3-4-3を「好きなシステム」と語るザッケローニ監督が、日本にそれを導入する場合でも同じことなのだ。そうした実情を踏まえ、今回の前編では3-4-3の特性やバリエーションについて整理し、後編ではザッケローニが日本代表で3-4-3を導入することの有効性と課題についてまとめたい。