得点を期待される大久保とパトリック
最も名前のある選手と言える大久保嘉人は、基本の技術・戦術眼が高く活動量も豊富。問題は得点の部分でどれだけ結果を残せるかだろう。ヴィッセル神戸ではチャンスメーカーとして働くことも多く、リーグ戦で二桁の得点を記録したシーズンは一度もなかった。
昨シーズンのフロンターレは、チャンスを作りながらも決定機につなげる一歩手前で冷静さや技術を欠いたり、決定機そのものも決めきれない場面が多く見られた。大久保に期待されるのはその部分での質の高い仕事だろう。昨シーズン、矢島卓郎の意識を変えさせた風間監督の指導のもと、大久保がさらなる進化を遂げることができるのか、勝負の一年になるだろう。
同様に得点を期待されるのはアトレチコ・ゴイアニエンセ(ブラジル)から期限付き移籍で獲得した新外国人のパトリック。ブラジルに渡っていたスカウトが「すごい選手を見つけた」と語っていたようでフロントの期待値は高い。189cmの身長もさることながら、太く短い首、分厚い胸板など、パッと見でゴツいのがわかる。youtubeをくまなくチェックしたが、ゴールシーンの多くは打点の高い強烈なヘディングシュートだった。
昨シーズンはサイドからの単純なクロスが異常に少なかったフロンターレだが、間違いなくクロスやセットプレーでも脅威になれるだろう。技術やスピードもあると評判で、フロンターレの崩し方にもうまく噛み合うのではないか。裏に抜けだすタイミングも良く、相手DFとの駆け引きがうまそうな雰囲気は感じられる。懸念材料は日本の環境、Jリーグの試合に適応できるかだが、真面目なジェシ、レナト、中山通訳の手助けもあり、日本の言葉や生活に馴染もうという姿勢を見せているようだ。
いずれにせよ、昨シーズンは怪我人の多さもありFWは明らかに層が薄かった。矢島は覚醒の兆しを見せたが、その後怪我で離脱。小林悠は終盤に輝きを取り戻したが、2011シーズンのような活躍はできなかった。パトリック、大久保の加入でより激しいレギュラー争いが繰り広げられるだろう。
中盤の守備を引き締められるボランチも補強課題のひとつだった。稲本潤一が出場したときはさすがの安定感を見せたが、シーズンを通しての活躍には不安が残る。
その点、コンサドーレ札幌から完全移籍で加入した山本真希は、効果的な補強に見える。驚異的な運動量とハードワークを厭わない姿勢は、中盤に安定感をもたらすはずだ。高い技術とセンスを備え、フロンターレのパスサッカーにも充分適応できるだろう。中盤ならどこのポジションでもできるユーティリティ性も武器のひとつだ。
洗足学園音楽大学で行われた新体制発表会見で彼は、フロンターレに来た理由を「レベルの高いチームで自分もうまくなれると思えたし、タイトルも取れるチームだと思ったから来た」と語っていた。実際、昨シーズンは等々力でフロンターレに負けて札幌の降格が決定してしまったが、対戦したときの印象が強く残っているようで、「攻撃に厚みがあって、対戦してすごくやりづらかった。フロンターレの選手は楽しくやっていたと思う」と述懐している。