出場機会を増やしたいと考えていた谷口、狩野、青山
横浜FMの動きは、12シーズン最終節翌日の12月2日に狩野の契約非更新を発表したことから始まった。クラブ側は契約延長の可能性も模索していたようだが、本人サイドの意向も踏まえた上でこのような形をとった可能性が高い。狩野は05年の入団以来、ポテンシャルを高く評価されていた選手ではあるが、ここ数年は満足に出場機会を得られず、明らかにくすぶっていた。
持っている能力をチームに還元できていたとは言い難い。昨シーズンの出場記録だけを見ても、リーグ戦での先発出場は『0』で途中出場もわずかに4試合。契約非更新後の天皇杯4回戦・浦和戦でゴールを決めたことが唯一の足跡である。これでは構想から外れても仕方がない。
狩野に続いて移籍の道を考え始めたのが青山だった。清水エスパルスから完全移籍で加入して2年が経過したが、中澤佑二と栗原勇蔵という新旧日本代表CBの壁は厚く、高かった。彼らのどちらかが負傷、あるいは出場停止の際に出番を得たときには高いパフォーマンスを見せただけに、本人がコンスタントに出場機会を得られる場所を選ぶのは当然かもしれない。
主力CBが揃って負傷欠場した第26節・鹿島アントラーズ戦では富澤清太郎とコンビを組み、連敗ストップに大きく貢献。この試合は彼が自信を取り戻すきっかけとなり、のちに「まずは安心しました。声をかけてくれるクラブがあるといいんだけど」と本音を吐露している。2年契約の最終年となる青山に違約金は発生しない。最後は甲府側が提示した年俸との折り合いが問題となったが、年俸ダウンを受け入れてチャレンジの道を選んだ彼の選択を尊重すべきだろう。
青山とは異なり、複数年契約を残してもなお籍を移したのが谷口である。川崎フロンターレから加入した11シーズンは出場停止を除く33試合に先発し、主に小椋祥平と組んで中盤の底を務めた。恵まれた体躯を生かした守備力と空中戦の強さは攻守両面において欠かせない武器となっていた。しかし、樋口靖洋監督が就任した2年目は満足に出場機会を得られなかった。新たに加わった富澤や中町公祐、熊谷アンドリューといったボランチが重用される中で、攻撃的MFやFWで途中出場する局面が増えた。
谷口が「どこでもいいからスタメンで試合に出たい」と語ったのは一度や二度ではない。その状況はシーズン終了時まで変わらず、獲得に乗り出すクラブが現れるのを待っていた。すると年始に柏から完全移籍での獲得を目指すオファーが届く。違約金を巡ってのクラブ間交渉は難航したものの、最後は両クラブが歩み寄りを見せたことで、谷口は通算3クラブ目で新シーズンを迎える。