攻撃陣が進化するために求められること
一方、攻撃陣の補強はないが、現有戦力はタレントがそろっている。日本代表FW前田をはじめ、ロンドン五輪韓国代表MFのぺク・ソンドン、オフには5クラブが獲得に動いたFW山崎亮平、代表入りが期待されるMF山田大記、代表候補にも選ばれたFW金園英学らを競わせながら、昨シーズンのスタイルを継続し、進化させる方針だ。
森下監督は攻守に連動するパスサッカーを志向し、前半戦は白星が先行した。しかし、後半戦はポゼッションを重視するチームが陥る落とし穴にはまってしまった。ボール支配率は高いのに得点が入らない。パスをつなぐという手段が目的化してしまったのだ。きれいに崩すことにこだわり、ゴールを狙うダイナミズムが薄れてしまった。しかも、突破力で前半戦の快進撃を支えたペクが負傷で後半戦を棒に振るなど、攻撃のアクセントとなる選手の離脱も響いた。
今シーズン、攻撃陣が進化するためには、攻めの引き出しを増やすことが必要だろう。基本はパスサッカーだが、状況に応じて速攻をしかけたり、ミドルシュートを増やしたり、セットプレーの得点力を上げるなど、ゴールを奪うバリエーションを広げなければならない。
そして、昨シーズンの経験から学ぶべきことは、コンディショニングの重要性だ。残り9試合を残した時点で首位・広島との勝点差は6。ACL出場権に十分手が届く位置にいたのが、その後、8試合勝利から見放されるという大失速。前半戦は勢いに乗って好スタートを切れたのに、終盤の勝負どころで完全に息切れしてしまった。
森下監督はキャンプからハードなトレーニングを科し、開幕後も週2回の2部練習を行っている。練習時間は一昨シーズンより増えた。その成果もあり、前半戦はハードワークで突っ走れた。しかし、紅白戦さえできないほど故障者が増える事態も招いてしまう。そして、後半戦17試合の成績は5勝4分8敗。前半戦の貯金をすっかり使い果たしてしまった。
今シーズン、森下監督には1年を通したチームマネジメント力が問われることになる。ハードワークしながらも、終盤の勝負どころで息切れしないよう、チーム状況を見ながらどうコンディショニングするのか。上位を狙える戦力はそろっているだけに、そこを誤らなければACL出場権獲得は決して夢ではない。Jリーグ昇格20周年の今年、かつてはアジアを制したジュビロが、再びアジアへの切符を手にすることができるのか、要注目である。