新しいジュビロのスタイルを築くために
開幕を待つヤマハスタジアムに作業の音が響き渡る。ジュビロ磐田のJリーグ昇格20周年に合わせて、スタジアムはリニューアルの真っ只中だ。竣工予定の8月には多くの記念イベントも予定されている。
そんな節目を迎える今シーズンだけに、チームとしても目標に掲げる「ACL出場権獲得」を成し遂げたいところだろう。最後にACLに出場してから、すでに8シーズンが経っている。クラブのコミットメントに「日本はもとよりアジアでもトップチームを目指す」と記してきたジュビロだけに、大舞台へのカムバックは悲願だ。
とはいえ、昨シーズンは12位という結果に終わっている。このポジションから一気にACL出場権のトップ3を狙えるのか? 常識的に考えると難しいだろう。しかし、戦力が拮抗し、予想外のチームが躍進し、降格するのが今のJ1である。
新体制記者会見で、ジュビロの服部GMは柏レイソルとサンフレッチェ広島の例を挙げた。この2年間、J1の優勝チームは一度J2に降格しながらも方針を継続したチームであること。最初は結果が伴わなかったものの、我慢強く継続してチームを作り続けて頂点に立ったこと。この事実を踏まえ服部GMは、昨年より指揮を取る森下監督に「新しいジュビロのスタイルを築くため、シーズンを通してブレずに攻撃的にやってほしい」と伝えてきたという。
目指す攻撃的スタイルで、今のチームはどれだけの結果を出せるのか? 昨シーズンはそれを見極めた1年だったと言っても過言ではない。今のジュビロのストロングポイント、そしてウイークポイントを洗い出す。その上で、ウイークポイントを補強し、昨シーズンからのスタイル構築を継続してストロングポイントを伸ばし、ACL出場権を狙う。それが、今シーズンのジュビロの青写真である。
補強に関しては明快で、ウイークポイントとなった守備の強化に絞られている。昨シーズン、J1ワースト3位の53失点を喫しているだけに、当然の措置だろう。ヴィッセル神戸から日本代表DF伊野波雅彦を獲得したのをはじめ、京都サンガの中盤を支え、ロンドン五輪にも出場したMFチョン・ウヨン、大学ナンバー1ボランチの呼び声も高い関西大の田中裕人と3人の即戦力が加入した。27歳の伊野波には、守備の新リーダーとしての期待がかかる。複数の守備的ポジションをこなす能力を持つ彼の加入によって、4バックだけでなく3バックも併用される可能性が高い。
また、チョンも田中もボール奪取力には定評があるだけに、バイタルエリアの守備力強化に貢献するはずだ。ボランチに関しては、レギュラーのロドリゴ・ソウトが移籍してしまったが、そのマイナスを補うコマがそろった。ボランチ候補には2人のほか、小林裕紀、小林祐希、山本康裕ら伸び盛りの若手もいるだけに、ポジション争いは熾烈だ。