選手間の競争を促す効果的な補強
昨シーズンの柏は、前年リーグ優勝したチームをベースアップしてシーズンに臨んだとは思うが、栃木から加入したリカルド・ロボがフィットせず、なかなか思うような戦いを見せることができなかった。前年にクラブワールドカップへ出場したことや、初めてとなるACL参戦もあり、コンディションも整わない。レアンドロが徹底マークを受ける機会も増え、序盤戦は厳しい戦いを強いられた。
さらに夏のウインドウが開くと、右サイドバックとして攻撃の起点となっていた酒井宏樹がブンデスリーガへ移籍し、レアンドロ・ドミンゲスとのホットラインが消失。那須や藤田がしっかりとその穴を埋めたものの、攻撃面での迫力が減退したのも事実だろう。結果として柏はリーグ戦を6位で終えた。
その後、天皇杯を制してACLの出場権を得た柏は、前述した通り効果的な補強を行った。その筆頭は、新潟から獲得した鈴木大輔だ。柏は昨シーズン、近藤直也と増嶋竜也がセンターバックのファーストチョイスとして出場していて、高いパフォーマンスを発揮していた。那須を放出した今シーズン、右サイドバックが手薄になると予想されるが、鈴木の加入でセンターバックの適正な競争が促されるだけでなく、サイドバックとしての経験も豊富な増嶋のユーティリティ性を生かすことも可能となる。
鈴木は2011シーズンから新潟でセンターバックのレギュラーを掴み、昨シーズンは28試合に出場し、準決勝まで進んだロンドン五輪でも、3位決定戦を含め全6試合にスタメンフル出場して貴重な経験を積んだ。まだ22歳とディフェンダーとしては若いが、パワフルなプレースタイルに経験を積み上げて急激に成長を遂げており、柏にとって大きな戦力となるのは間違いない。
1月末になって横浜FMから加入が決定した、谷口博之の存在もチーム力の底上げに繋がる補強だ。谷口は2011シーズンに川崎から横浜FMへ移籍し、初年度は主にボランチとしてリーグ戦33試合に出場したが、監督が変わった昨シーズンは途中出場が増え、25試合に出場したものの不本意なシーズンを送っていた。
谷口はボランチの選手として見るとそれほどボール扱いに長けている訳ではない。ボールを散らすようなプレーも不得手としている。逆にその強靱なフィジカルと運動量を生かして、どんどん前線に飛び出して相手ゴール前に飛び込んでいくプレーや、1対1のマーキングに強みを持っている。川崎時代は2シーズンで二桁得点を記録するなど、得点力もある。
柏ではどこのポジションで起用されるのかわからないが、ネルシーニョ監督は試合の流れを見ながら4-4-2と4-2-3-1を積極的に使い分けるため、本職のボランチとしてだけではなく、昨シーズンまで澤が担っていたような1トップ下のポジションで起用される機会も多くなるのではないだろうか。
谷口と同時に獲得が発表された狩野健太と太田徹郎も、昨シーズン多くの出場機会を得られていた訳ではないが、ともにJ1での経験を持つ選手。狩野は横浜FM時代から高いポテンシャルを何度も見せており、プレーの安定感が増せば、トップ下やボランチでのレギュラー争いに割って入るだけの力は持っている。選手間の競争を促す意味でも、大きな補強となったのではないだろうか。