興味を持たれ、見られていると、プレーが変わるブラジル人
今季※、J2からの昇格組でいきなり優勝争いを演じている柏レイソル。レアンドロ・ドミンゲス、ジョルジ・ワグネルというブラジル人選手の卓越した能力を抜きに躍進の理由は語れない。
(※原稿掲載時)
両選手の獲得交渉にあたったエージェントを稲川朝弘(インターロープ代表)という。
「ふたりは昔から動向をチェックしていた選手。それを監督のネルシーニョが気に入り、強化部の合意を得られ、移籍が実現しました。ワグネルは守備面で難のある選手ですが、ネルシーニョが戦術でカバーし、攻撃力を最大限に生かしている。外国人選手の成功は継続的に使うのが第一条件。そうしなければ、フィットするものもフィットしない」
外国人選手の獲得においては、強化部主導で進めるにせよ、監督の了解を取り付けられる形が望ましい。責任をもって起用するからである。よって、近い将来、指揮官の交代が濃厚となっている状況で、補強に動くのは余計なリスクを抱えることになる。
「選手の映像を何試合分も取り寄せ、現地に赴き本人とも会い、日常生活まで綿密に調査しても、外れるときは外れる。ブラジル人はここ一番の集中力が高い。自分が興味を持たれ、見られていると意識しているときは、モチベーションが著しく向上し、プレーがガラリと変わる。ギャンブルには違いないです」
過去、Jクラブのなかには市場価値をはるかに超える額の外国人選手を掴まされたり、エージェントに内部を引っかき回され、いいように弄ばれた例が少なくない。なぜこのようなことが起こるのか。
「ひとつは代理人と強化担当が結託し、不当な利益を得ようとするケース。まず間違いなくクラブは崩壊します。また、予算内に収まるいい選手が来てくれれば誰でもいいという安易な考えや、高ければきっといい選手だろうと思いがちです。近頃は多くのクラブが経験を踏まえて慎重に判断しますが、そういうクラブがないわけではありません」
ふたつを見比べ、より値の張るほうが良く見える。旨いものを作りたいがため、ついつい高価な食材に手を伸ばしがちな男の料理と似ている。
「だからこそクラブ側は情報を厚くしなければいけない。エージェントを利用するだけではなく、自分たちで情報を持たなければ。相場観を養っておくことで、余計な出費を抑えられます」