積極的な若手の登用でチーム力の底上げを図る
昨シーズン、クラブ史上初めてとなるリーグ優勝を果たしたサンフレッチェ広島。森保一監督は就任一年目にしていきなり栄冠を手にする快挙を成し遂げた。前任のミハイロ・ペトロヴィッチ監督が作り上げた攻撃的なサッカーを引き継ぎつつ、前線からのタイトなディフェンスと攻守両面においてセットプレーに磨きを掛けて、スタイルを踏襲しながらも新たな戦いを打ち出した。
また、優勝争いを続けながら、石川大徳や清水航平などの若手を積極的に登用したことも特筆すべきことだろう。シーズンを通して上位で戦う経験を積みながら、そこで若手を起用することでチーム全体の底上げを図った。特に広島のアウトサイドは非常に多くの運動量が求められるポジションで、シーズンを通して1人の選手がフル出場を続けるのは難しい。
ミキッチと山岸はケガが多くなってきているだけに、石川と清水の台頭はチームにとってかなり大きなことだと言える。またこれは、広島がペトロヴィッチ時代からのスタイルをチーム全体で共有し、選手とスタッフがそれを理解しているからこそ、なしえたことだろう。
ただ、広島は昨シーズンの開幕前に、累積債務21億円を解消すべく、資本金を99%減資している。これにより、選手たちの給与は低く抑えられ、思い切った補強策を打つことができないのが現状だ。それでも昨シーズンは新潟から千葉、大宮から石原と、ポイントを絞った的確な補強を行い、それがリーグ制覇に結びついたと言えるが、今季の補強に関してはほとんど動きがない。
今季加入が決まっているのは、期限付き移籍から戻ってくる岡本、ユースから昇格する野津田、そして残る3人はいずれも高校・大学からの新加入選手となっている。
一方クラブを離れる選手も最小限に抑えられた。森脇が浦和に、平繁が草津に完全移籍した他、大崎が徳島へ、横竹が鳥取、そして西岡が栃木へ期限付き移籍し、昨シーズン途中に期限付き移籍で加入していた辻尾がチームを離れている。
最も大きいのは、昨シーズン33試合に出場しディフェンスながら4得点を挙げていた森脇がチームを離れたことだろう。ただ、広島は昨シーズン限りで森脇がチームを離れることをある程度予測していたようで、夏のウインドウで水戸から塩谷司を完全移籍で獲得している。塩谷は一昨シーズンから水戸で良いパフォーマンスを続けており、広島は移籍金の発生するタイミングで獲得に動いている。これにより、森脇を放出することでの戦力マイナスは最小限度に止められたと考えることもできる。