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松田直樹という生き方 ~第3回 岡ちゃんなら1回くらい呼んでくれるかなと思った~

text by 宇都宮徹壱 photo by Tetsuichi Utsunomiya

ベテランにはベテランゆえの存在価値がある

――同年代でも、ちらほら引退する人が出てきましたが?

松田 上の方で残っている人もいますけどね。ただ、辞めた人の話を聞くと「サッカーを続けたほうがいいよ」という話はよく聞くので。だからというわけではないけど、やっぱりサッカーを続けていきたいし、自分にはそれしかないので。

――最近、多くのベテランが戦力外通告を受けている傾向については、どうご覧になっていますか?

松田 あり得ないですね。なんでマンチェンスター・ユナイテッドが、ベテランを切らないのか。そこのことは(クラブの経営者は)勉強しないといけないですよ。確かにギグスなんか、全盛期と比べて落ちていると思うんですよ。けど、ギグスを尊敬している選手が、ユナイテッドにいるじゃないですか。サネッティとかも、今でもバリバリやれているわけじゃないですか。30歳過ぎても、第一線でやれている選手が、ヨーロッパには多い。それはベテランとして、何らかの「いる意味」があるから、彼らはやれているわけじゃないですか。そこのところを、お金の理由だったり、若手が伸びないという理由だったりで切られるのは、オレはおかしいと思っています。

――松田さんご自身、若手だったころはチーム内のベテランに大いに刺激を受けたわけですよね。

松田 オレは若いときに井原さん、小村(徳男)さんというすごい存在がいて、でもオレは負けたくないという理由から、追いつけ追い越せの気持ちでやってきましたから。だからオレは、ベテランが悪いんじゃなくて(ベテランからポジションが奪えない)若手が悪いと思っている。なんでそうなるのかとは思っていますね。

――最終節の最後のサポーターへの挨拶で「オレはマジでサッカーが好きなんです。もっとサッカーがやりたいんです」とおっしゃっていました。あれは松田直樹の魂の叫びだったと私は思っています。いかがでしょうか?

松田 とにかく今でも思うんですけど、サッカーというのは本当に最高で、小学生のときからいろんなスポーツを親にやらせてもらってきた中で、サッカーが一番面白かったんです。だから野球が好きな人にも、一度でもサッカーを経験してほしいなと思うんですよ。それこそ戦争を変えるくらい、サッカーってすごいじゃないですか。しかもサッカーって答えがない。そういう面白さを、もっと伝えたいんですよ。

――先ほど、中田さんのセルフプロデュースについて話題に上りましたが、松田さんはご自身がファンに与えるイメージについて、どう考えていらっしゃいますか?

松田 やっぱり、サッカーをやっていたいという(気持ちの)ほうが一番強い。そういう中で、自分の中では「松田直樹にしかできないこと」というイメージはあるんですけど「ああ、こういう選手もいるんだな」というのは思わせたい。今のサッカー界って「走っていればいい」とか「運動量」とか、もちろんそれも大事かもしれない。でも、運動量ばかり取り上げていること自体がね。「そんなに(サッカーって)つまんなくなっちゃったの?」って思ってしまいますよ(笑)。

――松田さんが、マリノスサポーターの間で人気がある理由って、結局のところ、ご自身がマリノスの良い時も悪い時もひっくるめて体現しているからだと思うんですよ。優勝したときも、そして降格の危機にあったときも、常にそこには激しい感情を前面に押し出しながらプレーしている松田直樹の姿があった。だからこそ、サポーターは松田さんを失いたくないのではないかと。

松田 そこは分からない。でも、ずっと気持ちを込めてやってきたつもりだし、「負けたくない」という以外は考えずにやってきたんで。それが自分にとっての表現。たとえば闘莉王なんかも「負けたくない」という気持ちがあるから、ああいうプレーになるわけで、観ていて面白いわけだし。カズさん(三浦知良)なんかも、確かに全盛期と比べると、という部分はあるかもしれないけど、お金を払って観たいと思いますよね。自分も、そういう選手にはなっていきたいという目標はありますし、それがサッカーの面白さだと思っています。

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