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高校サッカー、日テレの中継姿勢に大きな疑問

text by 植田路生

無理矢理な美談に何の意味があるのか

 また、これ以外によく聞かれたのが「3年生はこの試合に負けたら引退です」という実況だ。なぜ引退という言葉を軽々しく使ってしまうのだろうか。

 高校サッカーは長く続くサッカー人生の通過点であるはずだ。彼らはここで負けたからといって、何も終わりではない。Jリーグ、欧州リーグ、日本代表と大きな夢を抱いている選手たちも多い。

 だからこそ、次のステージに進んだときに今ピッチにいる選手たちに何が足りていないのか、中継を通じて伝えていくことも必要だ。その姿勢がない故に、良くないプレーに対してもあまり指摘せず、適切な批評ができていないのだろう。

 放送権を持っている局はサッカーの真の魅力を伝える義務がある。彼らしか放送することができないのだから。

 無理に作り上げられた、デコレーションされた美談はいらない。

 優勝した鵬翔高校の部員は嬉し涙を流し、敗れた京都橘高校の部員は悔し涙を流した。彼らの頬を伝った涙は湧き上がる感情から自然と出てきたものだ。それ以上に美しいものなどあるだろうか。

【了】

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