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Jリーグ 12年前

ミシャ体制で2年目を迎えた浦和レッズに感じる、大いなる可能性

text by 西部謙司 photo by Kenzaburo Matsuoka

ミシャのサッカーのメカニズムとは?

 例えば、1トップ+2シャドーのコンビネーションはとても複雑だ。1トップ+トップ下や2トップの2人によるコンビネーションはシンプルで、1人がポストなら1人が裏、1人がニアなら片方がファー、1人がサイドなら1人が中央というように、動きが重ならなければいい。

 一方、1トップ+2シャドーは動き直しも含めるとコンビネーションの組み合わせは比較にならないほど複雑になる。浦和のトレーニングはハーフコートマッチがメインだが、1トップ+2シャドーのコンビネーションもその中で培っている。つまり定型のパターンは用意していない。定型に落とし込むには複雑すぎるのだ。

 1トップ+2シャドーのコンビネーションはそれだけ奥が深い。選手たちには創り上げていく楽しみがあり、上手く機能すれば対戦相手にとっては複雑なだけに読みにくい。バリエーションは数限りないほどあるはずなので、これで完成という基準もない。

 それと同じように、形ができたから浦和のサッカーが完成したわけではないし、違う言い方をすれば完成などないのだ。

 優勝した広島も完成はしていない。しかし、浦和に比べれば1日の長もある。そこが浦和の強化ポイントともいえるだろう。

広島より優っている点と劣っている点

 GKのビルドアップ能力は1つの課題だ。ミシャ・スタイルではGKの足技が必要である。CBとSBを兼任するポジションについては槙野を擁し、森脇を広島から獲得した。ここについては広島より充実している。

 広島と比べて見劣りするのは中央の司令塔ポジションと1トップだろう。鹿島アントラーズから補強した興梠が活躍し、噂の長谷部を獲得できれば、この懸案の2つのポジションもスケールアップが期待できる。

ベガルタ仙台から獲得した関口は2シャドーの一角かサイドだろう。選手層は厚く、ACLを戦い抜けるだけの戦力は揃えられたのではないだろうか。

 ミシャ・スタイルは世界的にみても珍しく、先進的な要素を持った戦術であるのは確かだ。けれどもJリーグの対戦相手にはすっかり手の内がわかっている。

 また、広島は2010年のACLに参戦したもののグループリーグで敗退している。戦術が勝敗を決定するのではない。浦和にとってミシャ・スタイルはアドバンテージではあるが、それをどう使って生かしていくか。試合運びも含め、まだまだ課題は多く、同時に伸びしろも残されている。

【了】

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