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酒井高徳インタビュー ~ドイツで花開いた才能~(後編)

text by 了戒美子 photo by Ryota Harada

叩きのめされた結果がプラスに

――サッカー選手として今後の目標をどう考えていますか?

酒井 将来について考えたことがあまりないんですよ。目標を持ってやるっていうのとはちょっと違うかな、と。ここっていうのを見据えて頑張るタイプじゃないんですよね。

――目標を作って逆算して行く……

酒井 っていうタイプじゃないので。オレはやっぱり、「自分はへたくそ」っていうイメージでサッカーをやってきたので先のことを考えにくいのかもしれません。例えば今の香川くんみたいに「マンUに入ってサッカーする」とかっていうのが現実的な目標として出て来ないというか、そういう姿がまったく想像出来ない。海外でやるっていうのもシュツットガルトから話が来るまで具体的に想像できなかったですし。

 夢を持つことも大事だと思いますけど、「今日の練習、明日の試合を全力で」とか、そういう感じでやってきたので。なんて言うんだろう、悪く言うとビビリというか。「オレはそんなそんな、まだまだ」とは思いますね。

――そういうことなんですか? 逆に一発勝負的な発想なので目標を持たないのかと思っていました。

酒井 そんな強気なタイプの人間じゃないんですよ。次があるかわかならないと思いながらやっています。今季バイエルンに惨敗(第2節1‐6で敗戦、酒井は先発フル出場)した後も、「次の試合は多分出れねーだろうな」と思いました。でも、また出られるチャンスが来れば、マジで頑張ってやろうって。

 だから逆に、何回もあるチャンスをつかむのは下手なのかもしれません。シュツットガルトの移籍も急に決まりましたけど、やるしかないってなったときにチャンスをつかむのは結構出来るタイプなのかなあ。

――じゃあ、あんまり深く考えないで進んだ方が良さそうですね。

酒井 そうなんですよね。だから難しいんですよ。新鮮な気持ちを持ちながらやらなきゃいけないのはわかっているんですけど、今は無意識に「どうせ次もあるだろう」っていうくらいの気持ちになっているのが、良くないですね。

――自分らしくない、と。

酒井 そうそう、そういう甘い考えが出てくるのもおかしな話ですけど。まだ何もしていないのに甘さが出ちゃうと、自分にも腹が立ちます。自分が叩きのめされるような結果は自分にとってプラスになるはずなんです。まあチームにとってはマイナスですけど(笑)。

 さっき言ったボコボコにされたバイエルン戦では、自分のところからも失点しましたが、「何がだめだったのか」とか「なんで? どうしたら良いだろう?」とか考えるきっかけになる刺激を受けて、それはそれで良かったと思います。

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