この記事は2011年3月発売の『サッカー批評issue50』に掲載されたものです。少し古い記事ではありますが、現在のJリーグが抱える移籍制度の問題点は大きく変わっていません。移籍制度の変更が与えた影響と、それに対応するクラブ・選手それぞれの立場を考えていくことができれば幸いです。(編集部)
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このままではJリーグが疲弊する
日本サッカー協会は、2009年6月19日の理事会でJリーグにおける選手・クラブ間契約の国際ルール(FIFA規約)の採用を決定した。同年11月1日から施行されたFIFAルールによって契約が満了する選手の移籍が自由化され、移籍保償金(違約金)がなくなった。
FIFAルールの採用から1年以上が経過し、Jリーグの移籍や契約にどういう変化があったのか。そして、2月上旬に突如勃発した岡崎問題や相次ぐ0円移籍をどう考え、直面する課題をJリーグとしてどう乗り越えていくべきなのか。それを探るべく、今回はクラブのフロントと選手エージェントの両側から話を聞いた。
Jクラブのフロントを代表して取材対応して頂いたのは、鹿島アントラーズの鈴木満強化部長とヴァンフォーレ甲府の佐久間悟GM。鹿島の鈴木氏は、中田浩二が2005年1月にマルセイユ(フランス)へ移籍したことでJクラブの先陣をきるような形でFIFAルールに沿った移籍金なしの移籍事例を経験する。
「それを教訓としながら、FIFAルールに変わらざるを得ないだろうということで準備してきた」と語る鈴木氏は、それ以降主力選手との複数年契約を進め、結果的に鹿島は0円移籍への対策を最も早く講じたクラブとなる。内田篤人の移籍でシャルケから移籍金(推定1億5000万円)を得ていることからもそれは実証されている。
その鈴木氏は、ルール変更後の1年をこう総括する。
「流れから言ったら世界の流れ、FIFAルールに追随することは致し方ないという状況にありました。1995年のボスマンの判決が出て以降、FIFAルールでは契約が満了した選手がフリーで移籍ができる、満了の6ヶ月前から他クラブと契約ができるというルールになってきました。2005年にそれがFIFAのレギュレーションに明記され、選手会とFIFAから毎年それに従えというプレッシャーがかかっていた。
移籍係数や年齢を下げながら5、6年引っ張ってきて、昨年から採用されました。ただ、これが本当にいいルールだとは思っていません。Jクラブというのは、まだ20年程の歴史しかありませんし、新しいクラブがどんどん出てきている中で運命共同体のような部分がある。基本給に移籍係数を掛けて移籍金が算出されるっていう国内ルールは非常に透明で、いいルールだと思っていたので撤廃は残念ですが、流れを考えると仕方のないことなのかなと思います」