こっちは1対1で負けちゃダメというのが根底にある
――きっと、ロンドン五輪前から苦しんだのはその点ですよね。
酒井 そうですね。ただ、環境が違う中で自分のプレースタイルを変えなきゃいけないのはそんなに簡単なことじゃないので、逆に良い経験だと思うし、そういう対応能力もしっかり身に付けたいと思っています。自分のやれる、得意なプレーをするだけっていうは誰でも出来ることだと思うので、自分の苦手な部分でもいかに色んなチームで力を発揮出来るか、ということが大事だと思うんです。
――それでも、新潟時代よりも、酒井選手のサイドがやられるシーンが減っているように感じます。
酒井 例えば日本だったらサイドバックのオレに対していかに数的優位を作るか、が崩す戦術だったりしますよね。でもこっちは、1対1で負けちゃダメだっていうのが根底にあります。だから目の前のサイドハーフを潰しちゃえばピンチが生まれないという考え方をします。自分は目の前の勝負に専念すればよくて、後ろはどうするかと言えば、後ろはついて来なきゃいけない。
オレに関しては自分のところからのピンチが少ないというよりは、後ろがしっかりしてくれているからだと思います。後ろが来てないのにガッていって簡単に裏取られたりしたら、やっぱり日本だとオレのせいってなるんですよね。「食い付かないで待ってればいい」っていうのがセオリーなので。でも、こっちだと後ろが来ないと……。
――来いよ、と。
酒井 そうそう、そうなんです。僕も気になって、プレッシャーに行く時に後ろを見てから行くんですけど、そうするとラッバディア監督に怒られますね。「後ろなんか見なくていい。お前の相手はコレだから後ろは後ろのヤツがやるんだ!」って。(マッチアップが)ズレて相手が来なきゃ必然的に行けないからお前の問題じゃない、と。だってそれまで前ははまっているわけだから、後ろは後ろがやらなきゃいけない。
それがここの監督だからそうなのか、他の監督もそうなのかはまだ分からないですよ。でも、行く行かないをもっとシビアに局面局面で考えられたら、もっとチャンスを作られることは減ると思います。90分間、全てのシーンに対して100%頭を使わないと厳しいけれど、日本人なら出来ることだと思うんですよね。
――その点で日本人の頭の良さが生かせる、と。
酒井 そうですね。それを生かすために自分のハードワークも武器になると思います。守備がきちんと出来ることが前提だと思いますし。走れない奴が気を使って中に絞ってとか外に開いてとか、考えながら動き回るのは難しいような気がします。
プロフィール
酒井高徳(さかい・ごうとく)
1991年新潟県生まれ。父は日本人、母はドイツ人。2006年にアルビレックス新潟ユースに加入し、2008年にトップ昇格。左右どちらもこなすサイドバックとして活躍し、昨年、シュツットガルトへ期限付き移籍。途中加入ながらレギュラーを確保する。また、五輪代表にも選ばれ、ロンドンでのベスト4に貢献。今年9月のUEA戦ではA代表デビューも果たす。
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