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本田圭佑 12年前

CSKAモスクワ 飼い殺しの真実~本田圭佑は“脱出”できるのか~

text by 沢田啓明 photo by Kazuhito Yamada

どうすれば本田圭佑はCSKAから“脱出”できるのか

 CSKAモスクワからの退団が難航したのは、ヴァグネール・ラブだけではない。

 ダニエル・カルバーリョは、18歳で名門インテルナシオナウからデビューし、将来はセレソンの中核を担うことを期待されたMFだった。03後半、20歳でCSKAへ入団。05年のUEFAカップ優勝に貢献し、この年のロシアリーグMVPに選ばれて、欧州主要クラブから引き合いが殺到した。しかし、ラブの場合と同様、CSKAがオファーを断り続けたため、10年まで退団できなかった。

 現在はパルメイラスでプレーしているが、顔がむくむほど太っており、かつての輝きはない。記者から「どうしてそんなに体重が増えたのか」と聞かれて「CSKAで、筋肉増強剤を飲むことを強要された」と答え、物議を醸した(その後、CSKA側から強硬に抗議されて、発言内容を全面的に撤回している)。

 一方、スパルタク・モスクワ、アンジ・マハチカラ、ルビン・カザンなどロシアの他クラブに入団したブラジル選手も少なくないが、ヴァグネール・ラブやダニエル・カルバーリョのようにクラブを退団するのに苦労したケースは見当たらない。CSKAは、ロシアでも特異なクラブと考えていいだろう。


本田圭佑はCSKAを“脱出”できるのか【写真:山田一仁】

 それでは、どうすれば本田圭佑はCSKAから「脱出」できるのだろうか。

 ヴァグネール・ラブは、「あくまでも一般論」と前置きしながらこう語る。

「契約が満了する前に退団したいと思ったら、クラブと良好な関係を保ちながら、根気強く移籍の希望を訴え続けるしかないだろうね。そして、CSKAが移籍を了承し、なおかつ彼らが望む金額の移籍金を払うクラブが現われた場合にのみ、移籍が可能になる。相手と交渉する過程で、彼らが移籍金の引き下げに応じることはほとんどないからね。

 となると、場合によっては、僕のように自分の収入を犠牲にしてでも移籍金を上乗せする必要があるかもしれない。僕の場合、退団の意思が固いことを示すため、フラメンゴへの移籍が成立する前の時点でモスクワの自宅を引き払い、車を売った。自分がそこまで決意を固めていることをクラブ関係者に示す必要があったんだ」

 世界広しといえども、ここまで「逃げ出す」のが難しいクラブも珍しいのではないだろうか。

【了】

初出:フットボールサミット第8回

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