高い移籍金を払ってもトータルではプラスになるケースも
Jクラブから中東への移籍は、これからもなくならないだろう。森本氏曰く、かの地のクラブでは、控え選手でも年俸4000~5000万円を貰えることはよくある。日本人よりもドライな外国人選手にとって、まず優先されるのは自らのサラリーだ。
その一方で、日本へ出戻る選手も増える可能性は高い。森本氏が興味深い話を教えてくれた。
「少し前、ルーマニアの瀬戸貴幸に『中東のクラブからオファーがあった』との報道がありましたが、あれはガセである確率が高いです。なぜなら、瀬戸は彼らが欲しいような選手ではないからです。もちろん瀬戸はいい選手だと思います。ただ、彼らは派手でスター性のある選手を獲得したいのです。瀬戸のように玄人受けする選手は彼らの好みではありません」
スター選手が次々と加入し、選手の入れ替わりが激しい中東。「CLで活躍した」「◯◯というクラブで◯得点」というブランドに、Jで活躍した選手たちは弾き出される。そのときJクラブはどうすべきか。
甲府のようにダヴィを切り札として使うのはありだ。さらに考えなければならないのが、トータルでの移籍金の収支だ。
たとえば、レアンドロは2009年にアル・サッドへ移籍した際、ガンバ大阪に7億5000万円(推定)が支払われたという。今回、仮に移籍金を2億円払って再び獲得したとすると、収支は5億5000万円のプラスだ。3年というブランクはあったが、悪くない数字と言える。
最初に中東に売る段階で、ここまで視野に入れることができるかどうか。年々変化する移籍市場の中で、Jクラブが生き残るためには、より一層の柔軟な対応と中長期のビジョンで選手を“売り買い”する先見性が必要だ。
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