日体大を優勝へ導いた柔軟な戦術変更
しかしセカンドハーフ、早稲田大学はなかなかチャンスをつくることができない。62分のFW八木彩香のシュートはゴール上に外れ、76分、2番ディフェンダー石田みなみのシュートもブロックされ、同76分にゴール前で得た谷本のフリーキックとその後のシュートも日本体育大学が築いた壁に阻まれた。
日本体育大学は終盤、殊勲の植村を下げてDF冨樫香織を投入。FWとしてプレーさせ、前線にポイントをつくり、1-2のスコアで逃げきった。
第26回関東大学女子サッカーリーグ戦制覇の関東王者・早稲田大学は、そのリーグ戦では3-1と勝っていた(会場はホームの早稲田大学東伏見グラウンド)日本体育大学にまさかの敗戦。
一方、日本体育大学は、規定により引き分けで神奈川大学と両校優勝となった前回第20回大会に続く連覇となった。
両校の7番を背負うキャプテンは明暗が分かれた。3試合無失点で国立に乗り込んだ早稲田大学の谷本は抱きかかえられるようにピッチを去り、1-0の勝利を挟む2試合のPK勝ちで苦しみながら決勝に上がってきた日本体育大学の下川沙織は屈託のない笑顔を振りまいていた。
早稲田大学の長岡義一監督は「日頃のサッカーができていなかった」と残念な表情。日本体育大学の矢野晴之介監督は「前線からボールを奪いに行って前がかりにプレーしたほうがやりやすい」との選手たちからの提案を受けて守備のやり方を変更したことが功を奏した、と述べた。
準決勝では2点を先行されたあと前がかりに行くしかなくなり、追いついてPK戦へと持ち込んだ。そこで得た感触が結果に表れたのなら、準決勝までの苦しみは無駄ではなかったことになる。優勝を諦めずに戦術変更を決断した監督と選手に敬意を表したい。
大学女子サッカー界を代表する日本体育大学と早稲田大学は、すべての年代を見渡しても有力なチームが少ない女子サッカーに於いて貴重な受け皿でもある。このすばらしかった決勝戦を励みに、今後もさらなる高みを目指して欲しい。