全盛期のカズほど強い光を放った選手はいない
坂田は、全盛期のカズほど強い光を放った選手は後にも先にもいないと断言する。
「カズが僕のことをどう思っているかわからないけれど、会えば互いにリスペクトして話をしますよ。今でも一番尊敬しているアスリートはカズです」
現在の東京Vを隅から隅まで見渡しても、カズが残したものを見つけるのは至難だ。時代が変わり、人が変わり、クラブもまた変化を余儀なくされた。
東京Vは後退戦に失敗したクラブである。クラブの規模を徐々に縮小し、その中で活路を見出さなければならなかったのに、でたらめな経営をして一時は消滅寸前まで追い込まれた。結果、多くの貴重な財産を失ってしまった。中にはきっとカズが置いていったであろうものも含まれる。
では、すべてが跡形もなく消え去ったかといえばそうではない。人々は記憶の中に緑のシャツを着たカズをとどめている。
ピッチを疾走するカズに憧れ、少しでも近づきたいと切望した選手がいる。
カズの強烈なプロ意識を目の当たりにし、影響を受けた指導者がいる。
カズ見たさにスタジアムに通い始め、とうとう離れられなくなったサポーターがいる。
彼らに触発され、殊更厳しくストライカーの基準を設けるライターがいる。
捲土重来を期す東京Vが再び栄冠を掴むとき、私はその価値をあらためて知ることになるだろうと予感している。
【了】