バルサの特徴を持った選手とは?
「MVPはバルサのコーチ陣によって話し合われて選出されるので、“バルサの特徴を持った選手”のほうが選ばれやすいんですね。バルサの特徴を持った選手というのは、テクニックがあって、状況判断に優れた選手のことです」
コーチが見るのは、ファーストタッチのボールの置き場所や、パスを受けるときの身体の角度、ボールを持っていないときのポジショニングなど細かいところ。ドリブルで何人もかわすとか、シュート力が強いといったわかりやすい個の力ではない。ただし、と浜田氏は言う。
「クラブによって評価基準は変わります。同じ実力だったとしても、例えばバルセロナには引っ掛からなくても、ミランやアーセナルには引っ掛かるかもしれない。欲しがる選手のタイプが違うんです。ミランはフィジカルが強く、技術の高い選手を好むし、アーセナルだったらスピード、スプリント能力をすごく重視します。あくまでも、バルサに受かるにはバルサの特徴を持っているほうが受かりやすいということです」
例えるなら、高校や大学の受験が近いだろうか。同じ大学受験でも、国立大学と私立大学では科目も違えば、傾向も違う。志望する国立大学に合格できても、私立大学では落とされるかもしれない。
MVPになるには、バルサ好みの選手にならなければいけない――。カンテラ入団までの経緯に関しては、建英君のお父さん、建史(たけふみ)さんが書いた『おれ、バルサに入る!』(文藝春秋)に詳しい。建史さんがサッカーキャンプのことを知ったのは、建英君が幼稚園のときだった。そのときは対象年齢から外れていたが、小1のときも「MVPになるのは難しい」と判断して参加を見送った。