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Jリーグ 12年前

柏レイソルは、なぜ天皇杯で優勝することができたのか?

text by 後藤勝 photo by Kenzaburo Matsuoka

柏の優勝から見えるJリーグの傾向

 単に美辞麗句というのではない、実感のこもった「みんな」一人ひとりの活躍。それが証拠に、渡部は「ベンチにいるメンバーもライバルで、みんな出られなくて“こんちくしょう”と思っていると思うんですけれども、そのなかでも(試合に)出たら絶対に結果を出すぞ、という気持ちが、交替メンバーも含めてプレーにあらわれた」とも言っている。

 準決勝で先発した栗澤は決勝ではベンチスタートだったが、大谷が負傷すると後半から出場し、しっかりと役目をこなした。

 柏に加入した選手は、そのことごとくが研ぎ澄まされる気がする。G大阪のように、有能な選手が「だぶつく」クラブもJ1には多いが、柏にはそれがない。誰もが貴重な選手だ。そして、移籍前のクラブでは控えや1.5軍のような序列にあった選手でも、このクラブではしっかりとしたレギュラーになり、控えの選手も、試合に出ればレギュラーと同等以上に活躍する。

 柏はJ1なりの潤沢な年間予算を確保している関東のクラブではあるが、どちらかと言えばビッグクラブではなく、むしろサンフレッチェ広島のような中堅地方クラブに近いポジションにある。さらに言うなら、選手獲得やチーム構成、戦術の方向性に於いては、ベガルタ仙台やサガン鳥栖のようなプロビンチアの匂いすらある。

 もっとも共通しているのは、予算というより、集団としてのまとまり、戦術面を含めての組織力を前面に押し出して戦っている点だ。

J1では「個の力」の競争になりがちだが、ネームバリューに関係なく、それぞれのポジションや役割に最適化した選手が活躍し、集団として勝つクラブが今季は上位に顔を揃えた。

 広島、仙台、鳥栖、柏と並べると違和感がない。コレクティヴなサッカーが大会を制するという今季の傾向を考えれば、非常に納得がいく。

そう、終わってみれば、この結果は納得だった。

 攻守の切り換えが速く組織力の強い、ひたむきで、意欲が高く、ガツガツとハードワークできるチームが勝つ。この結果を個の力やバルサ流の超ポゼッションで覆そうとするなら、その勤勉な労働を上回るプレーをしなければならないだろう。それが来季のJ1の見どころとなるかもしれない。

【了】

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