香川真司が出場機会を増やすためのヒント
まだチームにフィットしているとは言い難い香川ではあるが、WBA戦では先制点の起点となる浮き球のパスを出したほか、65分間のプレーで31本のパスを出しその内30本を成功させるなど、ぬかるんだ非常に悪いピッチコンディションの中でも高いボールコントロールのスキルを見せた。
ウィガン戦でも、慣れないポジションに入りながら落ち着いたプレーでポゼッションに関与し、最終盤には前線に駆け上がりペナルティエリア内でパスを受けようとする動きを見せた(ウェルベックからパスは通らなかったが、通っていれば決定機に繋がるシーンだった)。
特筆すべきなのは、香川は長い離脱期間から復帰してすぐに、離脱前のパフォーマンスに近い、もっと言えば離脱前よりもチームにフィットした印象を与えていることだ。ユナイテッドは伝統あるチームで、積み重ねられてきた揺るぎない戦い方を持っている。その戦い方のイメージを変化させるのは並大抵のことではないが、香川がユナイテッドに加入した意味を考えれば、少しずつでも彼のプレースタイルが受け入れられていくのは当然のことだろう。
ただ、香川は得点という明確な結果を残している訳ではない。新加入で8試合・2得点という数字は決して悪いものではないが、ファンペルシー、ルーニー、エルナンデスを押しのけて前線の中央で出場し続けられる数字ではない。香川が本来プレーしたい前線の中央には絶対的な攻撃の軸であるファンペルシーが鎮座し、得点という結果を出し続けているエルナンデスが猛アピールしている。そしてエースのルーニーが復帰してきた後、香川はどのポジションでチームに絡んでいけば良いのか。
ヒントはウィガン戦にある。クレバリーと組むセントラルミッドフィルダーのコンビは、強豪チームと対峙するときには不可能な布陣だとは思うが、押し込むことのできる相手であれば選択肢の一つとして考えられるだろう。香川にとって、現状は固定したポジションを得られている訳ではないのだから、レヴァークーゼンの細貝のように、少しでもプレーできるポジションを増やすことにこそ価値がある。
試合中のポジション変更にも対応できるユーティリティ性を見せられるようになれば、有用なマルチロールとしてチームに認識されるだろうし、そのことが結果的には、マンチェスター・ユナイテッドの戦い方を変えていく端緒になるかもしれない。
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