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日本代表 12年前

日韓サッカーについて考える―プラカード問題、因縁の歴史、ライバルとしての未来。(前編)

text by 植田路生 photo by Kenzaburo Matsuoka

スポーツと政治は別なのか?

――プラカード問題のときも盛んに「スポーツと政治は別」と言われましたが、なかなか切り離せないものですね。

後藤「主催者側が一生懸命切り離そうとしますけど。ただ、8月15日前後に日韓戦をやるのはマズイと思いますけどね。熱くなりすぎて怪我させられることだって考えられる。だから、なるべくそういうことには注意してマッチメークすべきだと思いますけどね。どうやったって切り離せないんだから」

「切り離せないで見るから面白いというのも、ありますね。普通の試合よりも、日韓戦を面白がって見られる理由は、そういう要素が入っているからだと思うんですよ」

後藤「日韓関係が本当に成熟した対等の関係になれば、楽しみだよね。だけど今はそうじゃない。日本人では結構真面目に韓国を応援したりする人がいる。新大久保で一緒に応援とか。信じられない。韓国人じゃないのに」

佐山「02年の共催時に韓国の人は日本の決勝トーナメント1回戦の相手だったトルコを応援して『日本負けろ』だったけど、日本のファンの一部が勝ち残った韓国を応援してくれているってのを知って仰天したんですよね」

後藤「『韓国負けちまえ』『クソッ、韓国勝ちやがって』っていうのをお互いに言えるようになるのが、日韓関係が成熟した時のあり方だと思います」

山本「今回のケースでまず考えなきゃいけないのはFIFAやIOCの立場。彼らは自分たちが売り込みたいのと違うメッセージは絶対に許さない。例えば、『カタルーニャ州は独立すべきである』と書いても同じ。だから、何が書いてあるかは問題じゃない。彼らは視聴者や入場料を払っている人たちを大事にしているし、そういう人たちにサッカー以外を売りつけるな、と。もちろんスポンサーのことも考えています。彼らのスタンスに抵触しない、それが第一。その上に日韓の問題がある」

――今回のケース、日本も旭日旗を掲げていたというクレームが入り、それを気にしてかU-20女子W杯で、旭日旗の持ち込みが禁止になったんですよね。JFAはすぐに撤回しましたけども…。

佐山「旭日旗の件は、奇誠庸(キソンヨン)の猿真似パフォーマンスの事後処理のときにはっきりさせておくべきだったのかもしれません。言い訳に使われたでしょ」

後藤「何でもダメと言うなら中国国歌の義勇軍行進曲も止めて欲しい(笑)」

――あれも元々は抗日の歌ですからね。旭日旗には政治的なメッセージが含まれるんですかね。

後藤「元々は日章旗(日の丸)と同じものなんだけど、その後軍旗として使われたので、あちらにとってはそうでしょうね」

佐山「そうそう。軍旗としての歴史があるから日帝陸海軍の象徴と見られる」

後藤「ナチスのハーケンクロイツは出しちゃいけないでしょ。韓国にとってハーケンクロイツみたいなものだって言われれば、そう思われても仕方ないかな。そうじゃないけどね」

【後編に続く】

初出:サッカー批評issue58

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