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Jリーグ 12年前

ガンバ大阪・遠藤保仁の「戦術眼」(後編)

text by 西部謙司 photo by Kenzaburo Matsuoka

どんな相手でもパスを回せる自信はある

 自分の思う“良いプレー”を「どんな相手でもつなげるし、回せると思っています」。

 そう豪語する遠藤に、その自信はどこから来るのかと聞くと、「なんなんでしょうねえー(笑)」

 ただ、どんな相手でもパスを回せる自信はあるという。実際、クラブW杯でマンチェスター・ユナイテッドと対戦したときも、ガンバ大阪は遠藤を中心にボールは回せていた。もっとも、遠藤自身も実際に対戦するまではどうなるのかわからなかったと言う。「ガンバの場合、点とられてナンボみたいなチームなんで、スタイルを崩してまでやろうとは考えなかったですね。僕はスタイルを変えてまで勝ちたいかと言われれば、貫いてボロ負けしたほうがいいという考えなんです」

 このあたりは自信というより、矜持なのかもしれない。

 遠藤は自分の考えるパスより、ボール1個ぶんずれたら満足できないと話していた。同じ15メートルのパスでも、ボール1個ぶんを狙っているのと、味方に通っていればいいと考えるのとでは、相手のプレッシャーが厳しくなったときに差が出てくる。ボール1個ぶんで勝負している遠藤だからこそ、たとえ相手がマンチェスター・ユナイテッドだろうと、"そこ"を通せば何とかなるだろうと思えるのではないか。逆に、それでダメなら潔くボロ負けするのも仕方がない。まず、ボール1個ぶんの勝負を挑まなければ何もわからないのだ。ここは職人の意地なのだろう。

 思えば、遠藤はずっと理解されないままサッカーを続けてきた。「ターンしろよって、よく言われるんですよ。そういうとき、人とは感覚が違うんだなと思います。僕がボールを受けて、相手ゴールのほうへターンして、パスを出す。そういうプレーのほうがいいときもありますけど、ワンタッチで前を向いている味方に戻して、その人が前に蹴ったほうが速いときもあるんです。たぶん見ている人は、なぜフリーなのにボールを下げちゃうんだろうと思うのでしょうけどね」

 遠藤に対する無理解の最たるものは、たぶん運動量に関してだろう。遠藤は走らない、動かないという理由で批判されやすいタイプだ。南アフリカW杯での記録で、遠藤の走行距離が大会最高レベルだったことに気づいてからは、そういう批判もなくなっているのだが、実はそこには二重の誤解がある。

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