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Jリーグ 12年前

ガンバ大阪・遠藤保仁の「戦術眼」(前編)

text by 西部謙司 photo by Kenzaburo Matsuoka

遠藤が早いのは、体ではなく頭

 プロになるような選手は、子供のころから傑出した能力を持っている。

 ただ、それが早くから表面化している子供もいれば、そうでもない子もいる。身体能力に優れているタイプは、小学生の時分から圧倒的なプレーで注目を浴びる。反対に、それほど身体能力が突出していないタイプは、ボール扱いやセンスはあっても、毎試合大活躍とはかぎらない。才能の表れ方にも個人差があるのだ。

 遠藤はとくに身体能力に恵まれているタイプではない。日本人としてはサイズがあるほうだが、特別にスピードがあるわけでも、パワーがあるわけでもない。彼が速いのは体ではなく頭である。シンキング・スピードが速い。速く考える能力は、速く動く以上にピッチでものをいう。

 シンキング・スピードの速さは、名選手の条件といえる。興味深いのは、スーパースターの多くが子供のころ体格が貧弱だったという事実だ。

 15歳のペレはやせっぽちで、ジーコは体格向上のための栄養補強や筋力トレーニングを課され、“サイボーグ”と呼ばれた。クライフ、プラティニ、メッシ、ピルロ……少年時代に体格のハンデを抱えていたエピソードはきりがないほどある。偉人伝の冒頭が貧しい家庭環境の記述から始まるのと同じぐらい、サッカーの偉人伝は体格のハンデから始まる。

 小さくて痩せていた“将来のスター”たちは、どのようにプレーしていたのか。体格に恵まれなかったぶん、何かで補おうとしたに違いない。おそらく、彼らは賢くプレーしていた。頭を働かして、自分に有利なプレーを探っていったのではないか。

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