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Jリーグ 12年前

ガンバ大阪・遠藤保仁の「戦術眼」(前編)

text by 西部謙司 photo by Kenzaburo Matsuoka


遠藤保仁【写真:松岡健三郎】

サッカーのプレーの大半は、タイミング

 ちゃんと止めて・蹴るが重要なのは、サッカーのプレーの大半がタイミングに関わっているからだ。

 パスを受けようとする選手はマークされる。たいていは、マークを外さないとパスは受けられない。だから、パスを受けたい選手はマークを外そうとする。問題はタイミングだ。

 マークを外せても、2秒もたたないうちに再びマークされてしまうから、外したタイミングでボールが来ていなくては意味がない。ボールを持っている選手の顔が上がる瞬間に、ちょうどマークを外しかけている、それがタイミングとしてはベストだろう。このタイミングは、出し手と受け手の距離によって多少調整が必要だが、パサーが目視したときに、受け手がマークを外しかけているのが標準的ないいタイミングになる。

 原則は受け手がタイミングを合わせる。いくらいい動きでマークを外したとしても、ボールホルダーが蹴れる状態でなければパスは来ない。とはいえ、受け手もある程度予測のもとにタイミングを計ることも多い。ここはワンタッチでコントロールするだろう、顔が上がるだろう、見てくれるだろう、パスしてくれるだろう、という予測のもとにマークを外すタイミングを合わせていく。場合によっては、そうした予測のもとに動かないと、いいタイミングでマークを外せないこともある。

 車の運転では、「だろう」は禁物といわれる。自分に都合のいいように予測するのは危険だと教習所で教えられたはずだ。しかし、サッカーの攻撃に関しては、自分に都合のいい予測も必要になってくる。そこで、ボールがちゃんと止まらないという事態が起こると、受け手はタイミングを失ってしまう。ここで当然パスが出てくるだろう、というタイミングで出てこなければ、それまでの努力はすべて水の泡になってしまうわけだ。

 止めるは蹴ると表裏一体だといえる。蹴れる場所に止めるからだ。そして、最もいいボールを蹴れる場所は、実は人によってさまざまである。

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