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連載コラム 12年前

日本代表に残る、解けないままの宿題―南アから変わらぬ2つのテーマ(後編)

10月の欧州連戦を1勝1敗で終えた日本代表。強豪に通用する部分があった一方で、実力の差を否応無しに感じさせられた部分があったのも事実だ。では、現状の日本代表で何が問題で、それをどう解決していけばいいのか。そして、未来に進むために何をなすべきなのか。連戦を現地取材した清水英斗氏が肌で感じた問題点を指摘する。

text by 清水英斗 photo by Kenzaburo Matsuoka

【前編はこちらから】 | 【サッカー批評issue59】掲載

ハイレベルなボランチを育成するのに必要な土壌

 とはいえ、細貝が日本代表の心臓になるためには問題点も少なくない。ブラジル戦ではせっかく奪ったボールをあせってつなごうとしてミスを犯すなど、遠藤や長谷部の落ち着いたプレーぶりに比べると、やはり荒削りな部分が目立つ。

 もっとも、サッカー選手なんてだいたいそんなものだ。遠藤、長谷部、細貝、それぞれに世界に通用する長所があり、それぞれに欠点がある。それをどう組み合わせるかは監督の腕次第ということになる。無論、欠点のないボランチを日本サッカーが輩出できればそれに越したことはないが、ブスケッツのように攻めて良し、守って良しのパーフェクトな選手が生まれたのは、スペインという世界有数のサッカーの土壌があってのことだ。

 ブスケッツはバルサBチームに所属していたとき、同チームが参加していたスペイン下部リーグではそれほど目立つ選手ではなかったと聞く。一流の技術で美しいフットボールを展開するトップリーグとは違い、下部リーグはどの国もフィジカル重視のぶつかり合いのサッカーになる傾向がある。そのような中ではブスケッツ本来の特徴はなかなか生かされなかったが、ポテンシャルを察知したバルセロナは彼をトップチームへ抜擢し、今ではチームの心臓へと成長している。

 果たして今の日本サッカーに、このような将来を見越して選手を育てる器量があるのだろうか? 世界基準を頭に描いて選手を育てられる指導者が日本サッカー界にどのくらいいるのか?

 そして今季バイエルン・ミュンヘンが40億円の違約金を払ってアスレティック・ビルバオから獲得したハビ・マルティネスも上背、足元の技術、守備力、ダッシュを繰り返す馬力を兼ね備え、オールマイティーに活躍できるボランチだ。元々はオサスナのBチームに所属していたが、数年前にビルバオが約10億円という違約金を払って獲得した選手である。Bチームの選手に10億円を払うという驚きの決断も、オールマイティーなボランチを得ることがいかに難しいのかという事実を教えてくれる。

 このような個人としてパーフェクトに活躍できるボランチが現れれば、それはチームを一段上のレベルへ押し上げることになるが、現状では長谷部も細貝も所属チームではボランチを任せてもらうことが少なく、別のポジションで出場する試合のほうが多い。それは彼らのボランチとしての能力をドイツのクラブが評価していないということでもあり、攻守に長けたボランチは日本代表の課題にも挙げられるだろう。

 あるいはお互いの欠点を補いつつカバーし合える布陣の距離感を見つけるか。いずれにせよ、攻撃サッカーを構築する上では相手のカウンターを防ぐことが必須条件となる。

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