スペイン3番手のクラブを狙うためのメンタリティ
その副会長は、昨シーズン終了時点で1部残留を決めた後、歓喜に浸る地元サポーターに「“降格”や“残留”という言葉は今のマラガにおいてNGワードだ」と釘を刺した。確かに、地元のマラガ人の中には未だ「1部残留で御の字」といった認識があり、3番手のクラブを狙う、担うためのメンタリティは根付いていない。アル・タニ率いるフロント陣は地に足をつけながらもできる限り速いスピードでそうした意識改革にも努める。
そのための基盤作りも着々と進んでいる。まずは、クラブの将来を担うカンテラ(下部組織)を整備すべく、新たなスポーツセンターの建設計画がある。そして責任者にはマヌエル・カサノバを引き抜いた。カサノバは長年エスパニョールのカンテラで結果を出した育成のスペシャリストであり、「タレントの目利き」としてスペイン国内では高い評価を受ける人物。
また、カンテラのテクニカル・ディレクターには元アスレティック・ビルバオのジューレン・ゲレーロが就任。現在、ゲレーロはパフォーマンスレベルを上げるための選手個々のプログラム作りなどマラガ独自の育成プログラム作成に尽力している。
ゼネラル・マネージャーには選手としてレアル・マドリー、スペイン代表で活躍した名ディフェンダーのフェルナンド・イエロが就任。スペインサッカー協会のスポーツ・ディレクターとしてスペイン代表の欧州選手権、ワールドカップ優勝を陰で支えた人物であるが、契約満了に伴い協会のディレクター職を2011年6月に離れていた。
中東での生活をベースにするアル・タニ、グンブンに代わりフロントの指揮を一任されているイエロGMは、「マラガをスペインにおいて最も重要なクラブの一つとなるところまで成長させたい。しかし、その目標というのは1日、2日では実現しないし、初年度からタイトルの話をするのも不可能。少しずつであっても確実な成長、レベルアップを目指していく」と述べている。
とはいえ、生まれ変わったマラガにおいて全ての物事が上手く進んでいるわけではない。最も大切なピッチ上でのパフォーマンスと結果がドラスティックな改革、特に予算規模に追いついていないのも事実であり、チームを率いるペジェグリーニに対する不満の声も少なからずあがっている。
今シーズンの前半戦は、10位という順位に終わり、大きな期待を持ってシーズン開幕を迎えた地元サポーターからすれば完全に「失望の前半戦」となった。当然ながら、15-16シーズン終了までの長期契約を結ぶチリ人監督のマヌエル・ペジェグリーニには強い風当たりとなっているが、イエロGMは「ペジェグリーニはわれわれの監督であり、彼には全幅の信頼を置いている。彼こそがマラガを高みに率いていてくれる理想の監督」と一貫した姿勢を崩していない。
初出:欧州サッカー批評5