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マラガが告げるリーガ2強時代の終焉!?(前編)

『金満オーナー アル・タニが画策するスペインサッカー改革』
2010年6月、リーガエスパニョーラのマラガが中東の王族に買収された。オーナーのアル・タニは、多くの資金を投下して急速にチームの強化を図ったが、給与遅配などの問題を抱えてUEFAの中でも苦しい立場に立たされている。現地の記者はこの買収劇をどのように報じていたのだろうか。翻訳:小澤一郎

text by カルロス・カリーニョ photo by Kaz Photography

【後編はこちらから】 | 2012年2月14日発売【欧州サッカー批評5】掲載

マラガに起こったドラスティックな変化

シェイク・アブドゥラ・ビン・ナッサル・アル・タニは、スペインサッカー界において初めてクラブを買収した中東の王族だ。カタールの王族であるアル・タニは世界中に30以上の会社を持つグループ企業のオーナーでもあり、石油関係ではなくほぼ全てがガス関連会社である。サッカークラブの買収の前には、スペイン南部の高級リゾート地であり、マラガからわずか60キロの距離にあるマルベーリャのスポーツ施設建設プロジェクトにも投資している。

 マラガ買収にあたり、アル・タニはマラガの前オーナーであるサンス一家に3600万ユーロを支払っている。そこにはクラブが破綻寸前に追い込まれた1400万ユーロもの借金も含まれており、アル・タニのオーナー就任によってクラブの債務は返済された。

 マラガの変化はドラスティックなものだった。アル・タニが降り立ってから2年が経過したマラガだが、それまでリーガ1部で下から2番目の2570万ユーロだった年間予算が、レアル・マドリー、バルセロナに次ぐ上から3番目の予算規模を持つクラブになった。その額、1億5000万ユーロ。わずか2年前、ポルトからポルトガル代表MFのエディーニョを獲得するための100万ユーロの移籍金がマラガにとってクラブ史上最高額の移籍金だった。しかし、今シーズン開幕前にはビジャレアルからスペイン代表MFのサンティ・カソルラを2200万ユーロで獲得している。

 カソルラ以外にも大型補強を敢行し、1100万ユーロでフランス代表MFのトゥララン(←リヨン)、700万ユーロでMFイスコ(←バレンシア)、600万ユーロでスペイン代表DFモンレアル(←オサスナ)、480万ユーロでアルゼンチンMFのディエゴ・ブオナノッテ(←リーベル・プレート)、400万ユーロでMFホアキン(←バレンシア)、280万ユーロでDFセルヒオ・サンチェス(←セビージャ)、210万ユーロでオランダ代表DFのマタイセン(←ハンブルガーSV)を獲得した。

 また、フリートランスファーではあるがマンチェスター・ユナイテッドやレアル・マドリーで活躍したファン・ニステルローイ(←ハンブルガーSV)も加入している。年齢的な衰えはあるものの、彼がマラガに加入したことで他のビッグネームもマラガの本気度を信じるようになった。彼の加入がなければ、これだけ多くの大型補強は実現しなかったであろう。アル・タニが2年で補強予算として投じた資金は総額1億3000万ユーロにもおよぶ。

「マラガを買い取った」ではなく「救った」と表現できるアル・タニのオーナー就任は、地元サポーターの間でも熱烈な歓迎を受けている。アル・タニはまさに「救世主」「英雄」として扱われている。消滅の危機に瀕していたクラブを救ったのみならず、コスタ・デル・ソルの「チェルシー」になる可能性をもたらしたオーナーであり、地元では神のような存在といっても過言ではない。副会長を務め、アル・タニの右腕として会長の信頼を得ているアブドゥラ・グンブンも「スペインにおける3番手のチームを目指す」と公言している。

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