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Jリーグ 12年前

セレッソ大阪監督レヴィー・クルピに聞く、アタッキングフットボールの真髄(後編)

text by 前田敏勝 photo by Kenzaburo Matsuoka

一番の基本はボールを簡単に失わないこと

――よく指導者からは、「FWとDFの間はコンパクトに!」という話があり、例えば千葉のドワイト監督(当時)は、「(FWとDFの間は)25mにしなさい」という約束事を設けていたようですが、レヴィー監督はそのような具体的な守備の指示を出すことはありますか?

「いいえ、そういう数字を具体的に与えることはありません。なぜかというと、サッカーというのは選手がやるもので、彼らは決して人形でも、ホワイトボードのマグネットでも、ロボットでもないから。選手である以上、伸び伸びとやってほしいし、クリエイティブなものを見せてほしい。逆に、ある具体的な数字を出すことで、それに縛られてしまうというのを、私は一番したくない。

 日本を見ていると、高校でも、大学でも、どのチームでも、本当にコンパクトにやるという意識がすごく徹底している。だからといって、それが選手のクリエイティブなものを失わせる要因になってしまってはいけない。戦術的なポジショニングだけに縛られているだけでは、見ていて何も面白みがないですから」

――根本的な話に戻りますが、志向する攻撃はボールを奪って攻めるのか、それともボールを取られずに攻めるのか、どちらでしょうか?

「試合のなかで状況は2つしかない。ボールを持っているか、持っていないか。ボールを失ったらいいディフェンスをしなければいけないし、ボールを奪ったら今度はポゼッションをする。しっかり守る、しっかり攻めるというアプローチは、いろいろあると思いますが、私はボールを簡単に失わないというのが、一番の基本になるかなと思います」

――ボールを失わない技術は、トレーニングで鍛えていけるものなのでしょうか?

「もちろん。そういう狙いを持った技術練習、戦術練習、フィジカルトレーニングを含めて、練習を重ねることで、十分できるものです」

――普段の練習でゲームを意識したものが多いのは、そのためですか?

「1つひとつの練習に狙いがはっきりとしています。シュートを重視したもの、クロスを多く入れるもの。そして、攻守の確認。そのように、試合のなかでの要素をいくつか取り出して、すべてゲーム形式のなかで確認して、最後がフルコートでのゲームという形になります」

――今季はメンバーの入れ替わりが激しく、苦戦も強いられていますが、このチームの伸びしろはまだあるでしょうか?

「十分に成長の余地があります。選手も若く、今はチームの哲学も吸収しつつあるところ。それをもっと彼らが理解してくれて、ゲームのなかで表現できるようになれば、もっと成長できると思います」

【了】

プロフィール

レヴィー・クルピ
1953年、ブラジル生まれ。現役時代はコリチーバやボタフォゴなどでCBとして活躍。指導者としてはアトレチコ・パラナエンセやインテルナシオナルなどで指揮を執った後、1997年にセレッソ大阪の監督に就任。一旦は帰国するも2007年に再びセレッソの監督となり、現在に至る。それまでボランチだった香川真司を攻撃的MFとして開花させたことでも知られる。ブラジル代表監督の候補になったことも。

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