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Jリーグ 12年前

ガンバ大阪のチームメートが体感する、背番号7の進化(中編)

text by 下薗昌記 photo by Kenzaburo Matsuoka

チームを引っ張る頼もしさが強まってきている

 ボランチ発祥の地、ブラジルではこのポジションの別名を「カレガドール・デ・ピアノ(ピアノの運び手)」と称するように、ボランチはあくまでもチームの主役を支える黒子役。ただ、遠藤はボランチという役割だけに甘んじず、自ら「ピアノの弾き手」として年々、表舞台に顔を出すようになってきた。

 サテライト当時の、一見淡白にも見えるプレーぶりを知る明神もその変化を感じ取っている。

「常に代表に呼ばれるようになって、その中心として活躍しているからか、今まで淡々としていた部分が、自分で引っ張っていくという風に変わってきた。決して、ヤットは口には出さないですけどプレーでチームを引っ張っていく頼もしさは、このところ1年ずつ強くなっているように思いますね。そんなに自ら前に立つタイプじゃないのは昔と変わらないけど、若手とかに色んな質問をされても、的確に答えてますしね」

 そんなリーダーシップを垣間見せたのが昨年のACL天津戦だ。グループリーグ通過を懸けた一戦は、遠藤の直接FKによるゴールでロスタイムまで1対0でリード。ここでチームが得たPKは、当然遠藤がキッカーを務めると思われたが、背番号7がボールを手渡したのが、当時不振に喘いでいた宇佐美貴史(現バイエルン・ミュンヘン)だった。

 一旦は断った宇佐美に対し、「お前が蹴れ」と命じたがその心中にあったのは「今季、貴史はまだ点を獲れていなかった。たとえ、外したとしても、僕が蹴っても外すかもしれないので、別にそれはそれで問題ない。GKもフィールドの選手だったのでコースさえ良ければ入ると思っていた」(遠藤)というものだった。

 悩める後輩へのさりげない思いやりも、プレー同様のさり気なさだが、どんな時でも表情を崩さない仮面の裏に、チームメイトを思う熱血漢の一面も持っている。この試合の得点を機に、昨季レギュラー定着への足がかりをつかんだ宇佐美も「ヤットさんが2点目かと思ってたら『まだお前は1点も取ってないから、お前が蹴れ』と言われて。最初は断ったけど『いいから蹴れ』って言ってくれたので。ヤットさんに感謝しています。ああいう形でも1点は1点。気持ち的に吹っ切れた」と当時を振り返る。

【後編に続く】

初出:フットボールサミット第6回

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