ネルシーニョによって磨かれた戦術眼
――ネルシーニョ監督は、選手交代などの采配が的確ですよね。
「1人ひとりの役割が決まっているので、その役割をこなせなかったら交代させられる、というのを全員がわかっています。たとえば、『あっ、あの選手は調子が悪いから前半で代わるかもしれない』と予測できるんです」
――それはベンチにいてわかるんですか? それともプレーしていてもわかるんですか?
「一緒にプレーしていてもわかります。『あの選手は危ないかも』『自分が危ないかも』。だから、みんなが危機感を持ってプレーしている。逆に、ベンチにいるときも、『あの選手は調子がよくないから、僕にチャンスがあるかもしない』とかすぐにわかる。だからモチベーションを落とせない。それに関する監督の采配は1年を通して一定なんです」
――監督というものは、〈自分の好みの選手〉や〈コンディションが悪くても選手の名前〉で使い続けるケースもよく見かけるけれど、ネルシーニョ監督に関してはそんなことはしないということですね。では、質問を変えて、守備の際に、監督から相手の誰々をマークしろとか言われますか?
「『2トップは相手の誰と誰を見ろ』と名指しのときもあります。名古屋戦は僕がダニルソンでしたね。広島戦は青山(敏弘)さん、マリノス戦は(中村)俊輔さんです。マークの仕方はベタベタに相手についていきます」
――監督から「ここのスペースが空いているぞ」という指示はあります?
「名古屋はダニルソンの真横が空くじゃないですか。名古屋戦(2011・J1第25節2-1)では、澤(昌克)さんとジョルジ(・ワグネル)が『中に絞ってダニルソンの真横のスペースを有効的に使え』と。中に絞ると今度はサイドに人数が減るのでサイドが停滞してくる。『サイドに開いたり中を狭めたりして出入りをしろ』という指示がありました」
――守備の出発点はFWがどこまで制限をかけるか、ではじまるけれど、監督からはプレスをかける位置は明確に指示されていますか?
「プレスの位置は話されます。今日は、守備が3バックに対してFWの2枚で見るトレーニングをしました。たとえばサンフレッチェは、試合中に4バックになるんですが、基本的に3枚のDFでボールを回すので、2枚のFWで『見る』という形をとります。その間に、どこかでプレスに行けるタイミングがある。チームの後ろの動きとの兼ね合いもあるんですが、プレスに行けるタイミングがあって、そこでFWがゴーをかける。プレスに行けない時間は相手にパスを回されてずっと振られるけど、それはもう辛抱するしかない」