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Jリーグ 12年前

ガンバ大阪のチームメートが体感する、背番号7の進化(前編)

text by 下薗昌記 photo by Kenzaburo Matsuoka

 さらに明神はこう付け加えた。「相手にプレッシャーをかけられている中で、しっかりとした基本技術を出せるのも特長でしょうけど、それを可能にするのがヤットの判断力。判断がとにかく早い」

 かつて背番号7に全幅の信頼を託し、ガンバ大阪のパスサッカーを築き上げた西野朗元監督は、しばしば遠藤をこう評したものだ。「ヤットは普通の選手と(頭の)回路が違う」

 誰もが認めるその判断力を支えるのが、一見、淡々としたように見えて、実は九州男児らしいプライドの高さと芯の強さを内に秘めた両目がとらえる視界の広さにあった。

中澤「やめられる凄みがある」

 2007年の加入後、ピッチ後方から背番号7の背中を見続けた中澤聡太は言う。「ヤットさんの素晴らしいところは視野の広さですよ。技術の高さなんて誰もが分かっていること。後ろから見ていていつも思うのは、ヤットさんには『やめられる凄み』があるってことなんです」

 やめられる凄み、とは一体――。

 2007年にガンバ大阪に加入した中澤は、CBでありながら、西野体制下では守りよりも、むしろ攻撃の第一歩として前線へのフィードを期待されていたこともあり、ボランチ遠藤とはピッチ上で近い距離を保ち続けた間柄だ。

「最初味方にパスしようと思ったけど、状況を見て止めたり、自分でシュートしようとしたけど、急きょプレーの選択を変えてパスに出来たり、とにかく流れを最後まで見ていられる。そういう視野があるから、色々な判断につながっている。それをあれだけプレッシャーがきつい中盤で出来るんですよ。

 ヤットさんがボランチで僕とパス交換していても、それは感じます。『ああ、見えてるな』って。ボールを付けても、相手がヤットさんの後ろから来てる時には返してくるし、僕のコーチングが間違っている時でも、ちゃんと正しいプレーを判断してくれる。よく、タメが作れるって言われますが、タメなくていいところではタメないし、周囲がタメて欲しい場面では必ずタメてくれる。

 リターンパスを返す時でも自分で相手をひきつけて、食いつかせて僕に返すとか、逆に僕が早く出して欲しいと思っている時には早く出してくれる。シャビ(バルセロナ)なんかと同タイプのプレーヤーだと思いますけど、受け手に配慮したプレーができる。逆に、紅白戦で敵の時なんかは、むかつくぐらい、相手を見てますから(笑)。

 今パスを出せば、絶対にインターセプトできるところでは絶対に出さない。僕がクサビ狙っているとパスを出すのを止めるし、前に出て行くと裏に蹴ってくる。もともと視野の広さという感覚があるんじゃないですかね。恐らく幼少の頃からそういう目を持っていたはず。それが経験と積み重なって、ああいう感覚に代わるんだろうなって思っています」

【中編に続く】

初出:フットボールサミット第6回

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