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日本代表 12年前

異端の天才 金田喜稔の「超常識」(前編)

text by 海江田哲朗 photo by Kenzaburo Matsuoka

若手には、殊勝な能書きを垂れないで欲しい

──それはまた惜しいことをしましたね(笑)。結局、久保、宮市ともに代表デビューはお預けとなっています。

「楽しみにしていたけど、どうせザックが出さんのだろうなと。呼んだなら出せよな。みんな期待しとるんやから。もし俺が同じ立場だったら、呼んだのになぜ使わんのや? と腹の中が煮えくり返っとったと思うよ。そういう生意気なガキだった。久保や宮市、彼らと同じように代表に呼ばれながら出られなかった宇佐美(貴史/バイエルン・ミュンヘン)には、そうあってほしい。

 ただ代表の雰囲気を味わい、練習がすごかったです、スピードが違いましたとか、殊勝な能書きを垂れないでもらいたいね。試合に出て点を獲りたかった。言うべきことはそれだけですよ。最終予選進出は決まっているウズベキスタン戦、相手にリードを許している状況で残り30分、監督だったらここで宮市が何をしてくれるのかを見たい。俺らやファンはもっと見たい。なのに使わない。もう辞めてくれと思う。周囲が何を求めているのか。それを感じ取るセンスがない人に代表の監督をやってほしくない」

──ザッケローニは評価しませんか?

「全然だね。3次予選で北朝鮮、ウズベキスタンに連敗。采配にも不満。この状況から最終予選に向けてどうモチベートするかが大事になるけど、あの人何も持ってないよ」

──ちなみにこの人は実力者だと認めている監督は?

「おらん。興味があるのは選手だけやもんな。プレーヤーしか面白くない」

──だから監督業に一切手を出そうとしなかったんですか?

「そういうこと。ただ、最近は教えることの楽しさに目覚めつつあるよ。今年の4月から明光サッカースクールの品川校で小学生を指導しているんです。どう足を運び、どう身体を向けたら、視野を確保でき、次のプレーがしやすいのか。これができたら、こいつら楽になるやろうなと思うことを伝える。初めてサッカーを考えたね。足の運び方なんて感覚でやっていたから」

──今までもサッカー教室はたくさんされてきたじゃないですか。

「やってきたけど、ほとんど1日だけの付き合いだった。トレーニングやって、ゲームやって、ハイさようなら。継続的に指導するのは今回が初めて。才能があるかどうかもわからないガキが相手だけど、うまくなっていくのを見るのは楽しい。ついでに自分もうまくなっていると感じる(笑)」

【後編に続く】

初出:サッカー批評issue56

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