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代表 12年前

アンドレア・ピルロが語るEUROの激闘と涙の理由(後編)【欧州サッカー批評 6】

text by 宮崎隆司 photo by Kazuhito Yamada

スペインには敵わないと無意識に考えた

──確かに。だが、『戦術上に何か大きな誤りを犯したわけではない』には賛同しかねる。やはりあのスペイン相手には3-5-2が有効だったはずで、仮に4-3-1-2で行くにしてもその「1」の選択には大いなる疑問が残る。なぜモントリーボだったのか、なぜ2-0の局面でモントリーボに代わってT・モッタだったのか。なぜ、ジョビンコを投入しなかったのか。

「そのすべてを否定はしないよ。でも、肯定もできない。考え得るすべてを考えた上で監督はあの策で臨んだ。次元の違う相手に対して、果たして違う形が通用したかどうか、たぶん答えは『ノー』だと思う。いずれにしても、あの決勝に辿り着いた僕らが、もう走れない状態だったことは事実だよ。ジョルジョ(・キエッリーニ)の故障、覚えているだろ? 疲労は極限を超えていたんだよ。

 今にして思えば、たぶん気力も残されていなかったように思う。決勝に向かう前の僕らに『あと90分』を走り切るだけの力はもう残されていなかったんだよ。“あのスペイン”を前に、開始から5分も経たないうちに『コイツらには敵わない……』と、無意識に考えてしまっていたんだ。シャビとイニエスタのパス回しについていける者は一人としていなかった。それが紛れもない現実だったんだよ。ならばその屈辱を受け入れるしかない。なので、僕は大敗をもちろん悔しく思いながらも、どこか清々しい気分(笑)。とにかく試合後のロッカールームで、監督が言ってくれた言葉が何よりも大切だと思っているんだ。

 プランデッリはね、肩を落とす僕ら向かってこう言ってくれたんだよ。『1‐0だろうが4‐0だろうが何も変わらない。この敗戦を受け入れることから明日が始まる。今この瞬間から我々はブラジルへ向けての一歩を踏み出す。今日の君たちは、あのスペインを恐れることなく、実に堂々と戦ってくれた。その勇気こそが今大会で最大の収穫だ。勇敢に戦い、最後まで全力を尽くした君たちに心から感謝する。南アからウクライナ、そしてブラジルへ。後2年、共に歩いて行こうじゃないか』と、僕はその通りだと思う」

──試合終了の笛が鳴った瞬間に君の胸中に去来した思いとは?

「やっと終わった、だね(笑)。なにせ長かったからね。去年の夏、10年在籍したミランを去ってユベントスへ移って、その合宿が始まった7月から数えて丸1年。プランデッリの言葉をかりれば、『あの南ア』から実に丸2年だからね。南アでの屈辱を打ち消すために走り続けた2年だったと言ってもいい。それにね、当然のことながら、その走り続ける間にも歳は重ねていくのだから、少しばかりの焦りもあった。でも僕らは今大会へ向けたコベルチャーノでの合宿で、そのフィレンツェの街で『欧州4強の座に必ず割って入ってみせる』と誓っていたんだよ。もちろん技術的に見ても難しいことだとは知っていたし、だけでなく今回の代表の周囲には信じ難いまでの混乱があったからね……」

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