イングランドにサッカーをさせなかった
──事実、イタリアは勝利。とはいえ、あのイタリアの良質なサッカーは、あくまでもイングランドの出来の悪さこそが要因だった、とする見方も少なくはない。
「むしろそうした見方が大半を占める。それは仕方ないと思う。ただ、確かなのは、イングランドに“サッカーをさせなかった”という自負を僕ら選手は全員が持っている。強烈にね。それこそ決勝で僕らがスペインに歯が立たなかったように、あの準々決勝では明らかにイタリアが実力で上回っていた。たぶん、その解釈で間違いはないと思う」
──次のドイツ戦も同じように言えるのだろうか。
「そうだと思う。ドイツの実力は確かにイングランドのはるか上のレベルにあった。ところが、ドイツ戦の方が“簡単だった”と言えるんだよ。なぜなら、ドイツは実に彼ららしくない失敗を犯していたから。それは油断、『イタリアに俺たちが負けるはずがない』と、過度な自信を彼らは抱いていたと思う。その証拠が、イタリアのカウンターに対する信じ難いまでに希薄な注意、高いディフェンスライン。06年のW杯と同じように、準決勝で、イタリアは強豪ドイツに圧勝してみせた」
──そして決勝。だが、イタリアの歩みは残念ながらここで止まる。
「あの試合での僕らは決して油断したわけでもなく、戦術で何か大きな誤りを犯したわけでもなく、ただただスペインが圧倒的に強かった。もちろん、彼らに比べて日程が不利だったのは事実。でも同じように不利な条件で僕らは2日も休みの多かったドイツを倒している。疲労の蓄積が最後に露呈してしまったとも言えるのだろうけど、そんな話では片付けられないくらいにスペインと僕らの間には開きがあったんだよ。
ジジ(・ブッフォン)が言った通り、『次元が違っていた』。それにね、スペインも準決勝ではポルトガル戦で延長、PKまでいってるわけで彼らも同じさ。そして、その試合では確かに普段より明らかに質の劣るサッカーをしていた。ところが、決勝では本当に見事に修正していた。つまり、彼らは続けて間違うようなことはない。言ってみれば僕らは最高のレッスンを受けたようなものだから、これを糧にして次を目指して行くしかない」