スラロームにスケール感のある宇佐美
香川のドリブルも宇佐美と同じくスラロームの質感を備えているため、共通点はあるが、やはり宇佐美の場合は178センチという体のサイズと、スピードにも自信を持っているため、スラローム自体にスケール感がある。足の長さにより、ボールを動かす幅が宇佐美のほうが大きいため、同じようなドリブルをしてもより相手ディフェンスの足が届きにくいところまで宇佐美はボールを運ぶことができる。そのため技術的には同レベルとしても、結果的には突破力という意味では香川よりも宇佐美のほうがより魅力的なプレーヤーと言える。
似た質感で体を動かす2人だが、香川はそれを狭いスペースでのボールキープやコンビネーションに活かし、宇佐美はより大きなスペースでの突破に活かしていると言えるだろう。
今後はやはり乾同様、相手から厳しいマークを受けたときにどうするかが鍵となる。ドリブラータイプは基本的に味方のパスでお膳立てしてもらい、良い形でボールを受けてからが自分のプレーのスタートになるため、相手がマンマークを付けるなどそれを許さないようにスペースを奪う守備をしてきた場合は、宇佐美も味方を活かす引き出しを増やしていく必要があるだろう。一度、味方を活かして、そこからのリターンパスを受けたりすることで自分も活きるプレーにつながるからだ。
まだ20歳と若い宇佐美。スケールの大きなプレーヤーだ。その将来の伸びしろは無限大に広がっている。
4人の才能が輝くとき、代表に新たなスタイルが誕生する
すでに述べたように、今回取り上げた香川、清武、乾、宇佐美らは同じ2列目の選手として大きな括りでは似たタイプに分類されるが、プレーの本質はそれぞれ異なっている。ブンデスリーガやマンチェスター・ユナイテッドでは彼らの能力がより独自性を持ってとらえられ、目立っている部分はあるが、日本代表として集まったとき、彼らの微妙な質の差異はより先鋭的な日本サッカーのスタイルを築き上げるのではないか。
今はまだ、日本代表における香川のトップ下は起用機会も少なく機能しているとは言えないが、清武や乾と並ぶことでパフォーマンスが上がる可能性はある。現時点では本田のトップ下がベストであることに疑いはないが、本田が独力でタメを作るのではなく、例えばバルセロナのように中盤の数的優位を作ってボールを回し、体に一切触れさせずに相手ゴール前にたどり着く。その際、メッシと似た質感を持つ乾のようなタイプが偽の9番を務められるかもしれないし、ウイングには宇佐美、シャビとイニエスタのポジションには本田と香川が並んでも面白いだろう。
ドイツで成長中の選手たちは、日本代表に新たなスタイルをイメージさせてくれる。そう期待せずにはいられないのだ。
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