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スポーツでこの国を豊かにする【サッカー批評 issue55】

text by 木村元彦 photo by Kenzaburo Matsuoka

縦割りのシステムを横串にする

――実は私は今、沖縄でスポーツ権に関わる問題を追っているのですが、懲罰を受けたサッカー指導者がもう公園でボールも蹴るな、選手との食事も禁止という明文化されていない酷い量刑を県の協会の方から言われているという。これが最初の裁判になるかもしれない(笑)。ドイツに取材に行くとあの素晴らしい施設に圧倒されますが、ソフトがあってのハードです。ドイツが素晴らしいのはスタジアム以前に健常者も障害者もスポーツをする権利が確立されていることですね。

「そうですね。スポーツ権はユネスコの国際憲章にも定められていて可決の意義は大きいと思います」

――次にスポーツ庁について。日本のスポーツ行政は競技団体は文科省、施設は国土交通省、ジムなどは経産省というように縦割りですね。これを統合すると。

「それは国会議員になるときの僕のテーマでした。サッカーに携わってきて、スポーツを通して皆が豊かに生きていくために縦割りのシステムを横串にすること。まさにスポーツ庁は僕の使命だと思っています。スタジアムを作ろうとしても都市公園法の縛りがあったりしてなかなか上手くいかない。国が縛っている。スポーツ庁はときの首相が一声あげれば明日にもできるものです。消費者庁もギョーザ事件があってすぐできましたよね。大切なのはまずは国民への理解です。今のスポーツの予算が基本法ができて10億円増えたんです。10億というと多く聞こえますが、それでも人口で割るとたったの238円です。なでしこの世界一でどれだけ幸福な気持ちを味わうことができたか。スポーツの素晴らしさを国民にしっかり説明していかないといけない」

――そこを地道にしていかないと逆に敵を作ってしまうと思いますね。町田などはJ2昇格に向けて必死にスタジアムを作った。小さな市町村で50億円近い予算を通してやってきた。それなのに開幕に仮設塔設置工事が遅れたことでペナルティを科すと報じられる。一般的な町田市民からの声を聞くとなぜそこまでサッカーに市の予算を割く必要があるのかとなります。今のやり方は素晴らしいサッカーを見せて行政が付いてくるのではなく、まず行政を説得しろとなる。それからよく問題視されるのが放映権、グッズ権を握るリーグからの分配金の少なさ。地方を元気に、と言いながらかなりな中央集権ではないですか。

「地方交付税みたいなものですね(笑)。システム的にJリーグはメジャーリーグ方式ですね。ひとつだけJリーグを擁護すると最初はリーグが中心になって経営を引っ張り上げなくてはいけなかったと思うのです。僕が愛媛でやっていてよく言ったのはJリーグに上がることだけが全てじゃない。Jに上がることで地域と距離ができるなら、JFLにいてもそれが地域にとってあるべき姿ならそのままでもいいじゃないかと。また上がって落ちて、それも含めて百年構想だと思うんですね」

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