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Jリーグ 12年前

横河武蔵野FCが選択した「Jリーグを目指さない」という“灰色の路”【サッカー批評 issue55】

text by 後藤勝 photo by editorial staff

ここで活躍すれば次のステップがあるという図式を見せていく

 横河武蔵野FCはかつて、横河電機サッカー部という企業チームだった。

 03年にクラブ化し、06年に運営母体をNPO法人化した。髙橋啓理事によれば、いまでも地元の人々に「横河さんのチームでしょ」と言われることがあるらしいが、地域クラブと形容する方が正しいだろう。選手に年俸を払う意味での人件費はなく、入会イコール入社でもない。トップチームの約半数は横河電機の社員でも、残りは学生やアルバイト勤務だ。

 ユニフォームや練習用具、練習場はクラブから提供される。ただ、部活時代に比べると資金面では心許ない。年間予算はリーグに差し出す供託金や遠征費を含めても億単位には届かず、マーチャンダイジング収入や入場料収入で補い、遠征メンバーの数を抑えるなどして赤字を出さない身の丈の運営を行っている。そうしたつましい日々のなかで、彼らは3つの意義を見出してきた。

 1つは選手個々の成長。ここで強くなってJリーグへと羽ばたき、あるいは準加盟クラブへと移籍していく。鈴木慎吾は浦和レッズを辞めたあとに横河電機サッカー部で力を伸ばし、Jの舞台へと復帰した(1999年アルビレックス新潟へ)。

「育成型と言われるセビージャのように、選手を“もらってもらう”のは望んでやっていることでもあります」と、依田監督は言う。

「私たちの場合は、お金はもらっていないんですけれども──個人が力を発揮してチームにいい影響を与え、移籍を果たし、また新しい選手が活躍する、組織と個のwin‐winの関係を10年度も続けられなかったのがいまの課題です。なかなか雇用ができないので、学生にしてもプロにしても、チームを選ぶうえで私たちの優先順位は低い。ここで活躍すると次のステップがあるという図式を見せていかないと」

 昨季の10番高松健太郎はタイリーグディビジョン2のアントーンFCに移籍した。幸い今季はFW冨岡が戻ってきたが、JクラブやJを目指すクラブに抜かれた分を補うには、依田監督が言う図式のアピールが必要だ。

 2つめはチーム自体の成功。JFL優勝と天皇杯出場が現在の目標だ。09年には前述のとおりJFL2位。天皇杯では初戦二回戦で大分トリニータと対戦し、延長戦で同点に追いつき、3‐3という打ち合いの末にPK戦で敗れるという死闘を演じた。

 闘志を維持するためにも上位にいることが大事なのだと依田監督は言う。
「Jを目指していないチームは優勝争いをしないと、あとは降格しないようにということだけになってしまう。残りの試合が消化試合になりかねないから、シーズンを通して優勝圏内にい続けることが私たちには必要。Jを目指すチームの昇格条件である2位以内と同じレベルで考えていかないといけない」

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