主導権をとれないときは?
岡田武史前監督は、W杯本大会に入る直前で戦術を修正した。それまでのポゼッション・スタイルから、守備を重視したカウンター型に変更している。そのぎりぎりの決断がベスト16につながった。
言い方を変えると、それまでのチーム作りに失敗し、ツケが回ってきたので、やむなく行った戦術変更だった。
ポゼッション型のわりに点がとれず、前方からのプレスが少しでも緩むと、カウンターに対応するにはセンターバックにスピードがなかった。遠藤・中村俊輔仕様のチームが、頼みの2人のコンディションが低下するや、前提のポゼッションすらできなくなって崩壊した。大会前にそれが起こったのはむしろ幸運だったかもしれない。
ザッケローニ監督のチームは、まだ挫折を経験していない。危ない場面は何度かあったが、チームの崩壊に直面したことはない。
ザッケローニ監督の緒戦でアルゼンチンと試合をした以外、格上との対戦がない。同格のオーストラリア、韓国とはやっているが、日本の戦い方を変える必要に迫られることはなかった。
戦い方が成立しなかったときの対応策
だが、日本が主導権を握れない相手はいる。本大会でスペイン、ドイツ、オランダあたりと対戦すれば、そうなるだろう。そうなったときのオプションを用意していない。
アルゼンチンに1-0で勝利したゲームでは、ボールを支配されながらも、しっかり守ってカウンターを仕掛けていた。南アフリカW杯ではほぼ守っているだけだったのが、的確なカウンターを打てるようになっていた。あのような試合ができれば心配はいらないのかもしれない。
ところが、いまにして思えばアルゼンチンはそれほど強くなかったようだ。コパアメリカは開催国だったにもかかわらず、ベスト4にも入れていない。
岡田前監督のときも、オランダ遠征でオランダとある程度の勝負ができた。その後、東アジア選手権でコンディションが低下し、遠藤・俊輔ラインが崩れた途端にそれまでの戦い方が成立しなくなった。現在の代表も、遠藤が抜ければ同様の事態になるかもしれない。また、ベストメンバーを組んだときの日本は、一部の国を除けば主導権を握れると信じたいが、それを証明する機会がないのが現状である。